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特攻をかけるリック・ドムはサラミスの艦橋めがけて突っこんでいった!
指揮席のライス中佐は目の前に迫るリック・ドムの姿に身体が固まる。
だめか!
レイチェル・ライスがそう思った瞬間だった。特攻するリック・ドムに立ち塞がる様にガンダムが姿を現した。
"01"と描き込まれたのはそのFガンダムは、アレックス・デイモン大尉の機体だった。
「させるかよ!」
ビームサーベルがリック・ドムの胴体を真っ二つに切り裂いた! 艦橋のすぐそばで爆発が起きる。衝撃でサラミス
の船体が僅かに傾く。爆発が起きて数秒後、そこに立っていたのはスクラップ寸前にも見えるFガンダムの後ろ姿だ った。機体からは電流のスパークする光が見える。
艦橋の乗組員は誘爆の可能性もありそうな、そのガンダムの姿に驚いた。
通信兵がガンダムに連絡を取る。
「フレア1、大丈夫か?」
ガンダムはゆっくりと振り向いた。顔というべきサブカメラは破損し、内蔵された機械が見えるなんとも痛々しい姿だ
った。
『俺は大丈夫だ。だがガンダムの方はヤバイ』
デイモンの声が艦橋の中に響く。ライス中佐は席のマイクをとった。
「ありがとう。デイモン」
ライスは一言そう言った。
『なあに、あんたの前でカッコつけたかっただけですよ』
デイモンはあっさりとそう言った。
その言葉にライスは思わず笑みをこぼす。
「かん……?」
声をかけようとした下士官はライスの楽しげな表情に気がついた。直前まで死ぬかもしれなかったのにだ。
「何をしている? ガンダムの収容を急げ!」
ライスは手を叩くと、はりのある声で指示を出した。部下達がはっとした様に一斉に動き出した。
ガンダムとゲルググは比較的外観を崩していたないジオン軍宇宙巡洋艦ムサイ級の残骸を見つけると船体に取り
ついた。
「どこか固定できる場所を……」
ミナはメインカメラとサブカメラを総動員して入り込める場所を探した。輸送艦をベースしたムサイ級はモビルスーツ
搭載を前程で設計されている。格納部分でならモビルスーツ2機が入り込める場所があるはずだった。ハッチらしき場 所まで辿り着くとビームサーベルを使い船体を切り開く。案の定、空洞部分を見つけたミナはゲルググを押し込んだ。 慣性で奥まで流れていくゲルググ。ゆっくりと中を流れるゲルググの様子を確認するとミナのFガンダムも船内に入っ ていった。ガンダムの機体全部が船内に入るとミナはコクピットのハッチを開く。宇宙空間移動用のバーニヤを装着す ると救命道具一式の入ったボックスを掴みゲルググに向った。
「ロウ」
ゲルググに辿り着いたミナは機体に触れると内部に呼びかけてみる。振動を感知して音声発生装置がミナの言葉
をロウに伝えているはずだ。
「ロウ、コクピットを開けて」
ミナはもう一度、呼びかけた。
しばらくして円形のハッチが開く。 内部ではジオンのノーマルスーツを着たパイロットが力なくうなだれていた。周
辺の計器パネル付近がかなり損傷している。ノーマルスーツの左部が黒くなっている。恐らく小規模な爆発があった のだろう。
「ロウ!」
ミナはゲルググのコクピットに乗り込むとジオンのパイロットに顔を近づけた。薄いスモークシールド越しに見覚えの
ある顔が見える。
それは間違いなくロウ・モリガンだった。
実際、ロウの姿を目にしても未だに自分達が闘っていた相手が彼だったという実感が湧かない。しかし仲間を殺し、
自分を殺す寸前だったのは紛れもなく目の前のジオンパイロットなのだ。
いや! 彼は私を助けてくれた。殺そうと思えば殺せたのに……
ミナはうなだれるロウのヘルメットを叩いた。
ロウはそれに反応して目を開ける。
「ミ…ナ?」
ロウの右手がゆっくりと上がるとミナのヘルメットに触れた。
「会えてうれしいよ」
「ロウ。しっかりして」
「僕は知らなかったんだ。彼のことなんて……」
「黙って。今、手当てする!」
ミナはコクピットのハッチを閉じるとロウの身体を右によせた。生命維持装置が密閉を感知して酸素がコクピット内に
供給を始めた。ミナは装置が壊れていなかった事に感謝した。
「待っていて。今、手当てをするから」
ミナは、コクピットの空いた僅かなスペースに入り込むと救命ボックスを取り出した。傷の程度を見る為に、わき腹に
顔を寄せたミナはその血の量に思わずたじろぐ。
早く止血しなくては……
血で染まったパイロットスーツの一部を切り取ると溜まっていた血がシャボンの様な塊になって飛び出した。人間の
生命を維持する血液は限られている。ミナは動揺する気持ちを抑え込みながら手当てを進めた。
赤く染まった患部にロウの血液を噴出させた原因を見つけた。人差し指ほどの破片が突き刺さっている。ミナは破
片に手を伸ばした。
「くっ!」
痛みでロウの顔が歪む。
「あっごめん」
「いいや、我慢できる。やってくれよ」
ロウはそう言ったが表情に余裕は感じられない。
「う、うん……」
ミナは素早く破片を抜き取った。血が細かい玉になって吹き出る。消毒用のムースを吹きかけたあと止血用のテー
プを貼り付けた。
「これで血は止まると思うんだけど、でもどこかでちゃんと治療しないと……」
「こ、これで十分さ」
「ただ止血テープで傷口を塞いだだけだよ?」
「……十分」
そう言ってロウはニヤリと笑った。
「見なよ」
ロウはモニターを指差した。
「あれは?」
そこには追撃される小型の宇宙艦が見えた。
「亡霊たちだ……"彼"の仲間たちだ」
「彼? もうひとりのあなたの事?」
「ああ、気がつかなかったよ。こんな奴が僕の中にいるなんて。危うく……君を殺すところだった。本当にごめん……」
とはいえ、ミナにはまだよく状況が掴めていなかった。
悪い夢ならまだマシなのに……
救命ボックスを片付けながらミナはそう思った。
「……いろいろな事を忘れてたんだ。昔の事。本当の僕」
「ロウはロウだよ」
「どっちも僕だ。今はすごく分かる」
「それでもロウは……」
「僕、ニュータイプを研究する施設にいたんだ」
ミナの言葉を遮る様にロウは話始めた。
「いろんな薬を飲まされたり注射された。人工的にニュータイプを作り出すとかなんとか……戦争に勝つ為に僕や仲
間たちをモルモットにしてたんだ。死んでしまった仲間も大勢いた。唯一生き残ったのは僕と、君を襲ったモビルアー マーのパイロットなんだ。そんな僕らを助け出してくれたのは……」
ロウは砲撃戦を続けるコルヴェット艦の映る再びモニターを指差した。
「……助け出してくれたのは大佐たちなんだ」
ジオンがニュータイプ研究に力を注いでいたのは聞いたことがあった。そして、その研究は連邦軍が全て引き継い
だという噂も聞いていた。ミナも多くは信じていなかったし気にも留めていなかった。だが、行なわれた実験の被験者 が目の前にいる。
「大佐たちだけだったんだ……」
「え?」
「人間として接してくれたのは大佐たちだけだったんだ」
ロウは出血のせいか少し目も虚ろになっていた。
「だから、僕も"ファントム"も大佐たちを見捨てられないんだよ」
そう言うとロウは操縦用のスティックに手を伸ばした。
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