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二稿目
ドッグにシートに覆われた三機のモビルスーツが搬入されていった。
それを見上げるミナはシートが外されるのを見守っていた。整備員が数人がかりでシートを引っぱりだす。
やがて白い機体がその姿を現した。
「これが…ガンダム」
ミナたちが搭乗するはずの3機のRX-78F"ガンダム"はサラミス級エイプリルの出航時ではなく作戦のベースとな
るサイドに届けられた。テスト調整が遅れたという理由だったがガンダムならばと、妙な納得で製造メーカーであるア ナハイム社に対して特にクレームはつけられなかった。
並べられFガンダムに集まった整備チームが仕事を始めだした。その中に 幼馴染のナッシュを見つけたミナは手を
振った。それに気付いたナッシュも手を振り返した。
「おい、ハンサカー」
突然の大声に驚き振り返るとミナが編入された部隊の隊長が立っていた。
「デイモン大尉……」
その後ろには同部隊のナーネットが退屈そうな顔で立っていた。ミナの顔を見ると軽く手を上げる。
「何してる」
「何って……ガンダムの様子を見に」
「そいつは整備チームの仕事だ。俺たちが見守っていても役には立たんさ」
「そうかもしれませんけど」
「それより飯を食いにいくぞ。休暇が出たんだ」
サイド5は最初の大規模な宇宙戦争が起きた場所である。幾多のサイドの中でもコロニーの損傷率は突出してい
た。宇宙に出れば一年戦争の傷跡である破壊されたコロニーや宇宙戦艦の残骸がいまだに漂っている。これは交易 上、一般貨物宇宙船の航行を大いに妨げるものだった。コロニー公社は、その残骸を処理すべく多くの"宇宙ゴミ"の 処理を専門とする民間企業と契約、周辺宙域の再開発を開始していた。やがて荒廃したコロニーに処理会社の人間 以外にも人が集まり始めるようになる。悲惨な歴史を刻まれたサイドのコロニーに再び活気が戻り始めていた。
繁華街に出てみた3人は食事のできる場所を探した。デイモン大尉は、せっかく来たのだから面白い店がいいと主
張した。残りの二人は同意はしたもののいざ、面白い店といってもデイモンの納得する店は中々見当たらない。随分 な時間を"探索"に費やしていた。
「あっ、すみません」
人ごみのなかミナは誰かとぶつかった。
何かが道端に広がった。ミナの物ではない。ぶつかった相手のものだ。
「わぁ、大変!」
ミナは慌てて散らばったいた物を拾い上げた。ミナは手を止めてそれを見た。落ちていたのはスケッチブックの紙だ
った。そこに描かれていたのは人であったり物であったり様々。ミナに絵のことはわからなかったがそのタッチは彼女 を惹きつけた。
「どうもありがとう」
持ち主がミナに声をかけた。顔を上げたミナをも目の前にいたのは眼鏡を掛けた若者だった。
「こっちこそごめん。前をよく見ていなかったもので」
「いや…僕も同じさ。ごめんなさい」
少し気弱そうな感じな若者は申し訳なさそうに謝った。
「絵、上手ね」
「え? ああ、仕事でね。ストリートで似顔絵を描いてるんだ」
「へえ……"絵描き"?」
「そうだよ」
ミナは改めて絵に見入った。
その様子に気がついた若者はミナに申し出をする。
「そうだ、お詫びに君のスケッチを描いてあげるよ」
「でも、連れが……」
ミナはそう言って背後を見たがデイモン大尉とハーネットの姿がどこにも見えない。どうやらミナに気付かす行ってし
まったらしい。
雑踏の中、取り残されていたミナは少し心細くなった。
横を見ると眼鏡の若者がにこりとした。
若者は慣れた手つきでペンを走らせていた。
「ああ、今日入ってきた宇宙戦艦の人なんだ」
「ええ、こう見えてもパイロットなの」
若者が用意した簡易タイプの小椅子に座ったミナはスケッチする若者の方を見ていた。
「すごいな。宇宙戦闘機?」
「いえ、モビルスーツ」
男の手が止まった。
「そう……」
「どうかした?」
「なんでもないよ。ところで僕の名はロウ・モリガン」
「私はミナ・ハンサカー」
「ミナか、いい名前だね」
「ロウもね」
二人は顔を見合わせて笑った。
「よし! できた」
ミナは立ち上がるとスケッチブックを見るため男の横にまわった。
「わぁ……」
そこに描かれていたのは白い紙の中に微笑むミナ。
「上手ね」
「どうも」
「私じゃないみたい」
「君の内面さ」
「え?」
「僕は感じるまその人を描く。目に映った姿をそのまま描くだけじゃ写真と変わらない。心に感じたものを描くのがアー
ティストさ」
「つまり私はあなたにこう思われてるってこと?」
「ああ、君はいい人だ」
ミナはスケッチを見直した。なんだか照れくさい。
「会って間もないのに?」
「眼をみればわかるよ」
そういうものなのだと感心しながらミナはスケッチブックの絵を見つめた。
「いつまでここに?」
「うーん……わからないな」
「また、会いたいんだけど」
「え? あ……うん」
「かして」
ロウはミナの見ているスケッチを取った。そして何かを記すと再びミナに手渡した。
「これ僕のアドレス」
そのとき、ミナの携帯電話のアラームが鳴った。
「ああ、くそっ!」
「え?」
「い、いえ、なんでも」
ミナ慌てて携帯電話を取った。
『おい! リトル! どこにいる?』
「ああ、大尉。ここの場所ですか??」
ミナは周囲を見渡した。
「タレンB地区」ロウが小声でいう。
「今、タレンB地区です」
『何でそんな所にいる?』
「迷ったみたいで」
『俺たちはもう飯を済ましちまったぞ』
「そうですか、私もどこかで適当に食事します」
『好きにしろ。ああ、それから休暇が途中で切り上げられた。寄り道せずに戻って来い』
「えー!」
『何か進展があったようだ。今度は迷うなよ。わからなくなったらタクシーで来い。じゃあな』
無線は切れた。
「怖そうな人」
「デイモン大尉? 少しね。でもユーモアのある人よ」
「そう?」
「ごめんなさい。部隊のみんなが船に戻ったみたい。行かなくっちゃ」
「うん」
走り去るミナをロウは見送った。
「絵、ありがとねー!」
途中、振り向いたミナは丸めた絵を持った手を大きく振った。
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