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暗闇の中、一斉に光が差した。
眩しさにアル・ハーネットは意識を取り戻す。ダウンしていたシステムが再起動し始めたのだ。メインカメラも回復し
外の映像が映りこむ。コンピューターが周囲に浮かぶ物体を識別し始めた。敵の姿はない。
ようやくハーネットは自分の置かれた状況を理解し始めた。
ゲルググの攻撃を受けたハーネットのFガンダムは強大なエネルギーに押されるように宇宙ゴミであるデブリのひと
つに叩きつけられたのだ。それが幸いしてエネルギーの衝撃はデブリが吸収してくれた。デブリは表面が熔け酷い状 態だったが攻撃を受ける前も多分"酷い状態"だっただろう。
システム異状を確認してみたが移動はできるようだ。右手に持ったガトリングガンは銃身が熔けて曲がり使い物に
はならなかったが背中に収めた二本のビームサーベルは健在だった。
「やっぱりこっちの方が性に合ってる」
ハーネットはガンダムにふたつのビームサーベルを抜かせると押し込められたデブリを切り裂いた。真っ二つになる
デブリが左右に離れていく。Fガンダム2番機はバーニヤを吹かすと自分をこんな目に合わせた相手を探しに飛び立 っていった。
破損したゲルググが動き始めた。
「だ、だめだよ!」
ミナはロウの肩を押さえて止めようとした。
「邪魔するな!」
ロウが怒鳴り声を上げる。いつもの優しい声ではない。ミナはロウの顔を見た。
そこには優しいまなざしはない。怒りに満ちた獣の様な目だ。
「ファントム……?」
ロウはニヤリと笑った。
「ご名答。連邦の女め」
「ロウ! 戻って!」
「無駄だ。あいつにそんな力も度胸もねえ」
「だめ! ロウ」
「うるさい。お前さえ現れなければ"俺たち"は上手くやってたんだ。連邦の連中も撃退できた」
「本当にそんなことができると思っているの?」
「やってみせるさ。俺とこのゲルググでな!」
「そんなこと言って!」
ミナの平手打ちがロウのヘルメットに叩きつけられる。痛くはないがファントムに入れ替わったロウは腹を立てた。
「こ、この!」
ゲルググのバーニヤが点火される!
死んだムサイ艦の腹を突き破って黒いゲルググは宇宙空間に飛び出していった。
逃亡しようとするコルベット艦を追撃して2隻のサラミスが砲撃を繰り返していた。
「コルベットの足は速い。何としても止めろ!」
艦長のデイビス・クロウは声を荒げて部下に指示をした。
放ったメガ粒子砲が艦尾にヒットする。小規模な爆発を起こしたコルベットは大きく進路を逸らした。
「いいぞ! 突入部隊に準備させろ。コルベットを捕獲する」
待機中だった連邦軍兵士の部隊は合図を受けてヘルメットを装着しだした。手には宇宙用のアサルトライフルが握
られている。
サラミスは徐々に被弾したコルベットとの距離を詰めていった。
「大佐、エンジンの修復は無理です!」
「諦めるな」
「は、はい!」
「ファントムとエンジェルとの連絡は!」
「つきません! レーダーからもロストしたままです」
大佐は椅子に倒れる様に腰掛けた。
「これまでか……」
ルントヘット大佐は部下に聞こえぬように呟いた。
操舵室にヘンデンブルグ博士が入って来た。彼がファントムとエンジェルを作り上げた人物である。かつてのジオン
公国ニュータイプ研究組織フラナガン機関の多くは連邦軍に接収され同じ研究を続けているが彼はそれを拒んだ。そ して自分の作品であるファントムとエンジェルで連邦にささやかな抵抗を続けていた。
「どうかね? 大佐」
「どうって、2隻のサラミス級に追撃されてる最中で先ほど動力炉付近を被弾しました。たったそれだけです」
「逃げ切れるのかね?」
博士は穏やかに尋ねた。
「どうでしょう? ファントムかエンジェルが戻ってくれば逆転もありえますがレーダーはロストしたまま。もっともミノフ
スキー粒子の影響下ではレーダーもあてになりませんが」
「芳しくなさそうだね」
「我々はまだ諦めていません」
「だろうね。だからここまやってこれたのだろうから」
力強いルントヘット大佐の言葉にヘンデンブルグ博士がにやりと笑う。
「そこが君の好きなところだ」
その時、レーダー手がモニターに映る機影に気がついた。
「レーダーにモビルスーツ確認! MS−14ゲルググです!」
損傷したゲルググはコルベット艦に急速に接近していた。
それは二隻のサラミス級も察知していた。
「モビルスーツ接近! ゲルググ! ファントムです!」
「総員迎撃態勢! ゲルググを近づけるな!」
迎撃用の機銃が一斉に射撃を始める。しかしゲルググはそれを難なく避けた。
「やめて! ロウ」
ロウの片手がミナの首に押し付けられる。とても怪我人とは思えない力だ。
「うるさい! 邪魔をするな!」
サラミスから離れていくゲルググはその飛行を乱していた。バーニヤの光が宇宙空間にジグザグに交差する。
「見つけた!」
後方からデブリ帯を抜け出したハーネットのFガンダムが黒いゲルググを見つけた。
「もう捕獲なんて生ぬるい事は言わねえ! 撃墜してやるぜ、ファントムさんよぉ!」
バーニヤを最大限に噴射したFガンダム2番機はゲルググに接近していった。
ハーネットは二本のビームサーベルを抜いた。
すぐにファントムは接近するガンダムに気がつく。
「まだガンダムがいたのか!」
機首をガンダムに向けたゲルググはビームナギナタを引き抜いてガンダムのビームサーベルを跳ね除けた。
「このぉ!」
一撃を退けられたガンダムはゲルググから離れていった後、大きく旋回しはじめ再びゲルググに機首を向けた。
次のアタックを警戒したファントムはバリヤのスイッチを入れた。
「まだシステムは生きてるんだ。みてろ!」
背中に背負ったユニットが可動し始めた。ゲルググの周囲が光り始める。再び対ビームフィールドが作動しはじめた
のだ。
「いくぜ! ファントム」
Fガンダムはビームサーベルを突き立ててゲルググに突っこんでいく。
「だめ! ハーネットさん!」
ゲルググから発せられる覚えのある気配にハーネットはガンダムを急旋回させた。
「ミナか? なんでゲルググに?」
戸惑うハーネットはゲルググから一旦、遠ざかった。
ゲルググはFガンダムに向くとビームナギナタを構えた。
「ガンダムめ、 まだいたか」
ファントムはフィールドの操作を始めた。ゲルググのジェネレーターが光り始める。
「やめて! ロウ」
ミナはロウの腕を掴んだ。
「なにする?」
動きの止まったゲルググを不審に思い様子を見守るハーネットはレーザー通信を試みた。レーザーがゲルググに当
ったのを確認すると呼びかけを開始した。
「ジオンのモビルスーツへ。そこにいるのはミナ・ハンサカーなのか? 」
雑音が聞こえてくる。何かの言い争う声も。
それはミナと知らない誰かの声だった。
「ミナ? 」
思わず顔をしかめるハーネット。
その時、ハーネットの耳に入って来たのは確かに銃声音だった。
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