2、召集

 ジオンの軍事拠点であり最終防衛ラインの一旦をになった月面基地グラナダは今では連邦軍に接収されていた。
その周辺では大規模な軍事訓練のできる区域を設置。ジオンの残したMS-06ザクなどのモビルスーツを利用して模
擬戦が行なわれていた。



 N・T・F(模擬戦闘訓練場)―月面グラナダ周辺―


「お久しぶりです。中佐」
 浅黒い男が握手の為に手を差し出した。
「元気そうだな、デイモン大尉」
「ええ、ここは緊張感があって居心地がいいんでね」
「敵側をやってるって?」
「そうです。訓練にやってくる部隊をコテンパンにやっつけるのが楽しくてしかたがなくてね。ザクにも慣れましたよ。あ
れはいいモビルスーツだ」
 この訓練場では接収したジオン軍のモビルスーツやその他の兵器を動員し仮想敵軍を編成していた。各地からや
ってくる連邦軍部隊と連日、模擬戦を繰り広げていた。デイモン大尉はその仮想敵軍のエースだった。
 レーザー照射で勝敗をコンピューターが判定するシステムとはいえ、実戦に近い緊張感で望むこの訓練場を彼は
大いに気に入っていた。
「でも中佐がこんなところに何の用です?」
「実はスカウトをして回っていていてね。モビルスーツパイロットを集めている」
「ほう……」
「君も候補だ」
「自分が? もうロートルですよ?」
 リケンベはファイルを開いた。
「模擬戦において158の演習に参加。158戦中撃墜は一度だけ。これのどこがロートルなんだい? それに君ら模
擬敵軍はほぼ3日に一回は訓練ながら戦闘をおこなっている。この経験は現在の連邦軍において最高の実績とは思
わないか?」
 デイモンは肩をすくめた。
「最高のモビルスーツを与えてやる。ザクなど二度と乗りたくなくなるような奴だ」
「なんです? それは」
 リケンベの大げさな言いっぷりにデイモンは興味深げに訊ねた。
「ガンダムだ。聞いた事はあるだろ?」
 その名前にデイモンの目の色が変った。
「分かりました。中佐、お受けしますよ」
 二人の男は再び握手を交わした。
「実は他のパイロットも探しているんだ。心当たりはないかい?」
「それなら"いいの"がいますよ」
 


 4機のRGM−79ジムがビームサーベルを振りかざし接近戦を繰り広げていた。ビームサーベルの一撃がある度に
モニター室では歓声が起きる。その中にリケンベとデイモンは入っていった。
「どういう設定の戦闘なんだ? 」
 隣でデイモンがにやける。
「"お薦め"の奴です。モビルスーツの格闘戦をやらしたらピカイチです」
 3体のジムが一機に同時に攻撃を仕掛ける。リケンベはこれが3対1のハンデ戦であることにようやく気がついた。
 攻められていたジムは攻撃をかわすと避けながら一機の腕を蹴り上げる。ビームサーベルが弾けとんだ。サーベル
を飛ばされたジムは焦ったのか一瞬、動きを止めた。相手はその隙を見逃さなかった。すぐにサーベルの洗礼をうけ
るとこになった。同時にモニタールームから通信が入れられた。
「レッド1、お前は死んだ。フィールドから抜けろ」
『ッデム!』
 スピーカーから悔し紛れの悪態が聞こえてきた。
 宙に舞っていたビームサーベルが掴まれた。掴んだのは3機を相手にしていたジムだ。切れていたビームが放出さ
れ一瞬で剣状に形勢されていく。ジムは両手に一本ずつのサーベルを持つと腕を広げた。
「ほう……」
 その姿にリケンベは思わず感心する。
 二機のジムは一気に突っこんだ。攻められた後退しながらもジムは繰り出されるビームサーベルを二本のサーベル
で器用に受けていった。そのうち攻め疲れなのか一方のジムの攻撃が荒くなる。大振りされたサーベルを受けずに
避けてかわすとコクピット部分ががら空きになった。
「決まったな」
 デイモンが呟いた。結果はその通りだった。ビームサーベルの剣先がコクピットに押し込まれていった。貫通はしな
かった。模擬戦用のビームは同じく模擬戦用のビームサーベルのみに反応し、反発と衝撃を起こす。しかしチタンの
装甲を溶かす程の熱量はない。影響を与えるのはジムの機体数十箇所に取り付けれた判定用のセンサーだけだっ
た。
「レッド2、お前も終わりだ」
 モニター監視員は冷たく言い放った。
 残りは一機は相手の攻撃力に後ずさりしていく。反撃が始まった。二刀流での攻撃は容赦なく相手を追い詰めてい
った。防戦のジムは受けるのが精一杯のようだ。明らかに攻撃スピードは相手の方が上だ。
「アン!」
 サーベルが突きつけられジムは避けようとして体勢を崩す。
「ドゥ!」
 ビームサーベルが弾き飛ばされた。
「トゥア!」
 上がった腕の隙間からサーベルが突き刺された。模擬戦用のビームは貫通はしないもののコクピットにしっかりと
直撃していた。ジムの構えはまるでフェンシングの選手の様だ。
「レッド3、お前も死んだ。これで小隊全滅だ」
 モニター監視員は、そう素っ気無く言うと置いてあったコーヒーをすすった。

 その一部始終を観ていたリケンベは、ただ呆気にとられるだけだった。隣のデイモンは、どこかしら得意げだ。
「どうです? 中佐」
「悪くない。決まりだ」




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