二稿目

「ブリリアン!」
 ジュエールは展覧場から飛び降りると若者に駆け寄った。
「ジュエールなのかい?」
 倒れそうになるブリリアンをジュエールは寸でのところで抱き止めた。
「しっかりして! ブリリアン」


 キーラは王様を指差した!
「王様、あなたはこの若者にこの"呪いのコート"を言葉巧みに着させましたね」
「な、なに証拠に」

「証拠ならあるよ!」

 群衆の中から大きな声がした。それはキーラの友だち、黒い魔法使いのクリスタルだった。
「うちの店からそれ買ったでしょ。証拠というか……領収書の控えがちゃんと残ってるわ! ほら!」
 クリスタルは小さな紙切れをひらひらさせた。
「あなたは、ジュエールと身分の低いこの若者の交際を認めなかった。そこで彼に狼の呪いをかけ、ブリリアンをライ
カン・スロープに変えた! 全てはジュエールに会わせない為!」
「お父様、本当なのですか?」
 驚きの表情で王様を見るジュエール。
 椅子にぐったりと腰掛ける王様は顔を押さえた。
「けれど、彼には獣に姿を変えても愛する人への想いが残っていた。それがこのペンダント。ライカンになっても彼はこ
れを身につけていた。ジュエールもその事を無意識に感じ取り、ライカンを助けたのよ!」
 キーラはペンダントをかざした。
「王様! 愛し合う二人を無理に引き裂くことなど邪推にすぎません。人生経験の長いあなたからみればジュエール
の行動はまだまだ危なっかしく思えるのかもしれない……でも、それに失敗したとしてもそれは彼女の人生じゃあり
ませんか!」
「おおー……」
 キーラの訴えに群衆から感嘆の声が漏れた。
「え?(なんか注目されてる? 私)」

「……そなたの言うとおりだ。わしはジュエールがその若者と好き合うことが気に入らずに、その呪いのコートを買っ
た。計画は上手くいっていた。だが獣になってもジュエールの事を忘れずに会いにくるのは誤算だった」
 王様はがっくりとうなだれてそう言い始めた。
「愛し合う者たちの仲を引き裂こうとするのは愚かなことだったかもしれぬな……ゆるしてくれ。ジュエール」
「父上……」
 怒りの言葉を吐き出そうとするジュエールを若者が止めた。
「……お父上は、あなたを心配してこのような事をしたのです。俺も大変な思いをしましたが王様の気持ちを考えると
決して憎いとは思い切れません」
「ブリリアン……」
「いい奴ね、あんた。ジュエールが好きになるのが分かる気がするわ」
 キーラはにやりと笑った。
 若者は前に垂れ下がった髪をかきあげた。
「あーっ! あんたはぁ!」
「お久しぶりです。あなたは確か市場でぶつかった人ですよね?」
 キーラの目が点になった。それに気付いたジュエールが言う。
「キーラ姉さまの"運命の人"ってもしかして……」
「ち、ちがうわよ。別の人よ、別! もっと背が高くて髪も長くて……」
 焦りながら誤魔化すキーラの複雑な胸の内を誰も知る者はいない。

 新しい恋を見つけてやる!

 そう心に誓うキーラだった。



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