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誰もいない廊下を見計らってジュエールは寝室に急いだ。
衛兵達は城に侵入したライカン騒ぎで誰もいない。ジュエールは寝室に飛び込むと慌てて扉を閉めた。
安堵の息を吐いたその時だった。
「一体、どういうこと?」
暗闇からいきなり声がした。
雲が流れ月の明かりが部屋の中を照らし出した。奥にはキーラが椅子に足を組んで腰掛けていた。
「キーラお姉さま。ライカンを追っていたんじゃ?」
「それは城の兵士さんたちに任せたわ。ところでジュエール。あんたどこに行っていたの?」
「何のことです? キーラ姉さま」
「分かってるのよ。あんた、ライカンを逃がしたよね。自分を狙うライカンをさ。どういう事なの? 分けわかんない」
ジュエールは観念したように口を開いた。
「これを見つけたんです」
ジュエールはペンダントを見せた。
「何? それ」
「彼に私が贈ったもの……それをライカンが身に着けていたんです」
「…ってことはあんたの彼氏ってライカンスロープ?」
「わかりません! わからないけど……あの時は何故か、ライカンを放っておけなかった」
キーラはペンダントを手にとった。チェーンにライカンの体毛が少しついている。キーラはそれをつまむと灯りにかざし
て見つめた。
「……うーん。これは何か陰謀がありそうね」
ドアがノックされた。
「誰?」
「王様より伝言です。ライカンを捕らえたと」
キーラとジュエールは顔を見合わせた。
「囚えたライカンには頑丈な鎖を足と手につないだ。もう、滅多な事では逃げられん」
王様はそう言って満足そうな笑みを浮かべていた。
「キーラ殿。ようやくライカンめを捕らえた。これで安心して寝れるというものじゃよ」
キーラとジェールは王様の部屋に来ていた。ライカンがどうなったかを聞く為だ。ライカンは捕まり王様は上機嫌だ。
「ライカンをどうするおつもりで?」
「散々、騒ぎを起こした報いじゃ。大体、獣のくせに姫を襲おうとしたのも許せん! 明日、公開処刑をおこなってやる
わ」
王様は冷酷な笑みを浮かべる。実の父親のその様子に不快な気持ちを募らせるジュエールだった。
キーラはジュエールの肩を叩いた。振り向くジュエールに頷いてみせた。
(私にまかせて)
「キーラさん……」
キーラは王様に近寄った。
「ん? どうした? キーラ殿」
「王様、私はこのライカンと一戦交えましたが決着がついておりません。つきましては刑の執行を私にお願いできない
でしょうか?」
「そなたが処刑を?」
「はい!」
「むう……しかしそなたの命も危険だが」
キーラはいつも間にか取り出したのか上下に刃を取り付けた奇妙な鎌状の武器を投げた。それは回転しながら飾っ
てあった甲冑を真っ二つにすると再びキーラの手元に戻ってきた。キーラは武器を舞うように身体を回しながら受け止 めた。
「ほう……」
その技に感心する王様。
「望むところです。しかし鎖につながれた相手をただ殺すのはプライドがどうも……なにより気が納まりません」
「うむ、ライカンと戦いたいというのだな」
キーラは頷いた。
「よろしい。話に聞いたそなたの不思議な剣さばきとやらも見てみたいしな。好きにおやりなさい」
「感謝します」
キーラはわざとらしいくらい恭しく頭を下げた。
「キーラ姉さま……」
心配げにするジェールにキーラはウインクして見せた。
「大丈夫、私に任せて」
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