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世界は混沌としていた―
人間と魔物は混在し、魔力が存在した。そして、それを扱う魔法使いたちがいた。
これはそんな世界の物語……
ある晴れた日の朝。
森の中にある大きなお屋敷に一人の若い娘がやってきた。
大きなドアをノックする。
『そんなに叩かなくてもいいわい』
老人の様な低い声でドアが文句を言い出す。
「あっと、ごめんなさい。でもこの金具はノック用でしょ?」
『いやいや、これはアクセサリーじゃ。そう乱暴に扱うもんではな』
「……あ、っそう。ところでキーラいる?」
『いるよ』
「キーラに会いに来たの。あけてくれない?」
大きな喋るドアがゆっくりと開いていく。
「どうも♪」
『どういたしまして』
日焼けした黒髪の娘は慣れた様子で屋敷の中に入っていった。
「これはいらっしゃいませ! クリスタルさま」
足元から声がする。見ると床では白い陶器のポットが跳ねていた。
「ハーイ、ポット。元気?」
「はい、少し欠けた箇所もありますが元気でございます」
「欠けたの? 苦労が多いのね」
「は、はい。キーラお嬢様にはいつも手を焼かされてまして」
「ポットも大変ね。あっキーラいる?」
「キーラさまはまだお休みになってますが」
「調子でも悪いの?」
「いえ、単に夜更かしのし過ぎでございます」
そう言ってポットは首……いや、体を振った。
「部屋行っていい?」
「クリスタルさまですからよろしいと思いますが、多分、お嬢様、ぼけぼけですよ」
「慣れてるからいいよ」
クリスタルはそう言うと階段を駆け上がってキーラの部屋に向かった。階段を上りきると廊下の先に大きな扉が見え
る。キーラの寝室だ。取っ手をひねると思い切り引っ張った。
「キーラ、おっきなーっ!」
中に入るとベッドの上であられもない格好で寝転がるキーラが見えた。枕と頭が反対方向だ。あまりの寝相の悪さ
にクリスタルは少し驚く。
「まったく気持ちよさそうに寝て……」
クリスタルは窓のそばに行くとカーテンを開いた。清々しい太陽の光が一気に部屋に差し込む。
まぶしさにキーラが反応する。
「うう…ん」
「もう! 起きなって!」
「もうたべれましぇん」
「そんなありがちな寝言を……」
クリスタルがシーツをひっぺがす。
「あん?」
体を起こしたキーラは寝ぼけ眼でクリスタルを見た。
「あ、きゅりしゅたる……おはよ」
「”おはよ”じゃないよ。約束忘れたの?」
「約束? なんだっけ? 合コン?」
「違うわよ! それもいいけどそうじゃなくて……」
「じゃあいい」
そう言って再び布団にもぐりこむキーラ。
「むっ!」
クリスタルは不機嫌そうな顔をするとバッグから小さな人形を取り出した。青い毛糸を髪の毛にしたその人形はベッ
トに寝ている誰かに良く似ている。クリスタルは裁縫針を一本取り出すと人形にそっとあてた。
ニヤリと笑うクリスタル。
ブスリ……!
次の瞬間、屋敷にキーラの叫び声が響いた。
「まったく血も涙も無いわね。いてて……」
キーラは痛むお尻を押さえてベッドから出た。
「もう! あんたが誘ったんだからね! このイベント」
クリスタルは二枚の紙切れをちらつかせた。
洗面所から顔を出すキーラ。
「何?」
「ほら、今日ってイベントの日じゃん。もーっやんなるなーまた呪うぞ、こら」
「いや、それマジかんべん!」
「悪いと思ってるなら早く……ねっと」
クリスタルはキーラの人形を再び取り出した。それを見たキーラは慌てて洗面所に引っ込み身支度を急いだ。
ドタン!
再び開かれる洗面所のドア!
「もしかして今日は"イベント"の日じゃね?」
そんなキーラを冷やかな目で見るクリスタル。
「さっき言ったでしょ! もう! マジで呪うわよ」
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