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カタパルトからでない発進は衝撃がないからつまらない。
コクピットの中でミナはそう思った。
コンピュータとCGを駆使した多包囲型のキャノピースクリーンの視界は足元までが映りこむ。まるでモビルスーツの
頭に立っているような気分だ。
「フレア2、ハーネットいくぜ!」
横にいた白いモビルスーツがバーニヤに点火し、コロニーの鋼壁から飛び立った。前方の宇宙空間にはすでに発
進したデイモン大尉のガンダムが先行している。
ミナは大きく深呼吸をするとスロットルレバーを握った。
「フレア3、リトル行きます!」
バーニヤが噴射する。ミナの白いガンダムが暗い宇宙空間に飛び出していった。
「うっ!」
予想外に強い加速感に一瞬と惑う。
やはり、ジムとは違うね……
コロニーから3つの白い光が飛び出していった。
バーニヤの噴射ガスは真っ暗な宇宙空間に白い線を残す。
「目標接近。俺に続け」
3つの白い光が綺麗に散開していく。
「まずはひとつめ」
どこからか引っ張ってきたムサイ級の残骸がスクリーンに映った。コンピュータは障害物として感知しそれを指し示
す。ミナの焦点がそれを見定めようとすると機械はそれを感知しズームアップした。
「動かない敵なんて……」
そう思いながらミナはマシンガンの発射の準備をしようとした。そのときハーネットの通信が入り込む。
「フレア1、俺からやります!」
左の方にハーネット機のガンダムが視界に入ってくる。
『許可する』
デイモン大尉はあっさりと許可を出した。
「もう!」
ミナは口を曲げた。
最初は自分がしかけたかったのに!
そんなミナの気持ちを知ってか知らずか先行していく一機のガンダム。
「でかいマトだぜ」
ハーネットはトリガーを引いた。
120oの炸裂弾がムサイの残骸に放たれた。弾丸は"元"艦橋を貫く。ピンク色の爆発が起き、ムサイは大きく反対
側に傾いた。
『古臭いガンもいいねぇ!』
ハーネットは叫んだ。
『次、リトル。行け!』
「了解!」
ミナのガンダムはトリガーを握った。ミナの角膜が目標を選別していく。コンピュータはそれを読み取りスクリーンに
照準をつけていく。瞬時に標的部分を選び出す。
まずは戦闘力を無くすべき……あそこだ!
マシンガンの弾丸は主砲跡を直撃した。
コロニードッグ内のサラミス級巡洋艦エイプリルでは白いモビルスーツたちの様子をモニター越しで見つめていた。
「わおっ、すごい。いい腕ね、二人とも」
ライス艦長はドリンクパックのチューブを咥えながらそう言った。
「さすがにデイモン大尉推薦の事はある」
「それに面白いところがもうひとつ」
「何です?」
リケンベ中佐はこの危なっかしい艦長の言葉に耳を傾けた。
「指示は曖昧な目標狙撃だったのに一人は司令塔、一人は攻撃力の排除。個性がはっきりしてるわ。こういった部
下を扱うのは面白そう」
「なるほど……」
リケンベはライスの言葉に納得した。
「各自、機体の挙動を身体で覚えとけ。そいつは無反動式だが機体の損傷加減で照準が狂う事がある。基準となる
挙動を覚えていれば異状を察知し易い。覚えておけ。人間の感覚はICチップより優秀なんだ」
デイモン大尉は120mmライフルをセミオートに切り替えるとムサイのエンジン部分、格納部分、前部と3箇所を撃ち
抜いた。
「やるじゃねえの。あのオッサン」
デイモン機に接近していたハーネットは見事な射撃に思わずそう呟いた。
爆発が続くムサイの上方を通過する三機のガンダム。
『破片に巻き込まれないように少し離れて飛べ』
先頭をいくデイモン機をミナが見やる。
「大尉、すごい」
その時、ミナは左側方に何かを感じとった。
何?
その感覚に思わず120mmマシンガンを向けるミナ。銃口はハーネット機に向けられる格好になった。
「り、リトル! てめえ! 何、根にもってやがる!」
慌てて機体を避けるハーネット。
「違うよ、"サムライ"。向こうに何かいる」
デイモンはレーダーを見た。戦時のミノフスキー粒子が今だ滞留するこの宙域ではレーダーもろくに効果がないエリ
アがある。遠距離であればあるほどその影響力は高い。ガンダムのレーダーも広域のエリアをカバーできなかった。
「何も映ってないが……いや!」
レーダーにいきなり光点が現れた。
コンピューターは瞬時に識別を確認する。
『コロンブス級輸送艦……リバプール? 味方だ。ガンを下ろせ、リトル』
「は、はい!」
ミナのガンダムは120mmライフルの銃口を下ろした。
連邦の輸送艦だった? でも、すごく攻撃的な感覚を感じたのに……
その時、無線が割り込んできた。コロンブス級からのものらしい。
『こちら第202輸送船団所属”リバプール”。途中、正体不明のモビルスーツの攻撃を受けて被害を受けた』
「正体不明・・・?」
”ファントム”!
ミナの頭にその名前が浮かんだ。
「了解、リバプール。ここはもうコロニーだ。我々もいる。安心して寄航しろ」
『助かる』
次の瞬間、コロンブス級は火の玉に包まれた。
爆発が周囲を明るく照らし出す。
ミナたちは一瞬状況が理解できなかった。
「敵だ!」
デイモンが叫ぶ。
炎の背後から光に照らされた黒いモビルスーツの輪郭が見えた。
「ファントムか! くそ! ガンダム投入直後に出くわすとはな……」
逃げ出すわけにはいかないし逃げる理由も無い。装備は初めてのものばかり。好ましい状況とはいえない。だが部
下は優秀でマシンは最高だった。デイモンは意を決した。
「各機、フォーメーションに入る。作戦はデスク上のみのぶっつけ本番だがやるぞ!」
黒いモビルスーツもガンダム小隊に気がついたようだ。
スクリーンのウインドウ画面に黒いモビルスーツの拡大映像が映し出されていく。遠近で確認し難い部分はコンピュ
ーターが補正をし、機体は鮮明に映し出された。画面には"MS−14ゲルググ?"と表示されていた。
「あれが……ファントム?」
スロットルを握るミナの鼓動が早くなっていく。
ガンダムたちは黒いモビルスーツに向って銃口を向けた。
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