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二稿目
人工の夜の闇の中、二人は芝生の上に座った。
「一体、どうやって入って来たの? ここは一応、軍の施設なんだよ」
ロウは悪戯っぽく笑うと肩を竦める。
「得意なんだ、こういうの」
「得意って? 忍び込むのが?」
ミナは眉をしかめてロウを見た。
「まあね」
「泥棒でもやってるの?」
「お金に困った時、たまにね」
そう言ってロウはニコリと笑った。
「そんなことより大丈夫かい?」
急に真面目な顔つきになりミナを見つめた。ミナは一瞬、呆気に取られた。
「え? まあ……」
「軍港に行ったら病院に運び込まれた女性パイロットがいるって聞いたんだ。もしやと思って。でも元気そうだね」
「うん、大したことないよ。気絶しただけみたいだから。一晩、様子も見て何もなかった復帰する」
ミナは笑った。
「また宇宙に出るのかい?」
「多分……でも私の乗るモビルスーツは修理をするからすぐにってわけじゃないと思うけど」
ロウは手を後ろについた。
「でも、ミナがモビルスーツに乗ってるなんて想像できないな」
「こう見えても結構、上手いのよ。モビルスーツの操縦」
「へえ……」
ミナは得意げに言ったが話を聞いているのかいないのか、ロウの返事は少し上の空的だった。
「自分にはMSパイロットが合ってるのかも」
「そういえば、なんで、ミナはモビルスーツのパイロットになったの?」
「うーん、なんとなく自分に合ってるかなって。適正検査をやったら合格しちゃってそのままここまできちゃった」
「適正?」
「うん、宙返りしても自分の位置が把握できるとか、動体視力とか……他にもいろいろとね。そいうのが合わなければ
陸戦用モビルスーツのパイロット候補に回されたりする事もあるんだよ」
「ふーん」
「ロウはさ、なんで絵描きをしてるの?」
「仕事がないから」
「あっ……ごめん」
慌てるミナの様子を見てロウは笑った。
「なーんてね。ミナといっしょだよ。合ってると思ったからさ」
「ああ、ロウ、絵が上手だものね」
「まだまださ。ストリートで絵を描いてるのは生活費の為もあるけど練習も兼ねてる」
「もらった絵ね、仲間に上手く描けてるって褒められたよ」
「本当かい? うれしいね」
「それから……」
「何?」
隊のハーネットにからかわれた事を話そうとしたミナだったがそれは控える事にした。
「なんでもない……」
視線を外すミナ。
しばらく沈黙が続いた。
「今日ね……死ぬかと思ったんだ」
その言葉にロウがミナを見る。
「ここでこうしている事がちょっと実感できない。だってほんの数時間前には……宇宙空間で…たった一人で死んでい
くのかもしれなかったのに」
そう言ってミナは頭をうなだれた。
「怖かった……」
小さな声で一言そう呟いた。ロウはうなだれるミナを見つめた後、そっと頭を撫でた。
「今は、こうして僕と話してる。君はツイてる。これからもきっとそうさ。僕には分かる」
ミナは顔を上げた。
「僕に君を守ることができれば……」
視線が重なる。
二人の瞳はお互いを見つめ合っていた。
「ロウ……」
その時、動くライトの光が見えた。
「まずい! 警備だ!」
ロウは素早く立ち上がった。
「じゃあ、ミナ」
ふいに唇に何かが触れた。
ミナはその感触に一瞬、戸惑う。
「またね」
ロウは闇に紛れて去っていった。
けれど……ミナの唇にはまだ彼の感触が残っていた。
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