|
サラミスの船体にガトリングガンを構えたFガンダム2号機が立っていた。
「いっけぇ!」
宇宙空間に無数の閃光が走り薬莢が飛び散る!
発射された弾丸は漂うダミー外装を粉砕しながら目標に突っこんでいった。ターゲットになったMS-06ザクの装甲が
まるで分解される様に飛び散っていく。
パイロットのハーネットはトリガーを戻した。
「すげえな。けど俺の趣味じゃねえな」
カモフラージュした外装の下に隠れていた連邦軍の主力モビルスーツRGM-79ジム次々と飛び立っていく。
「アルファ、ベータ、チャーリー隊はジオン部隊の駆逐にあたれ! 残りはファントムの捕獲だ」
艦橋が作戦開始で慌しくなっていた。
「こんな事に戦力を割かれるとはな」
巡洋艦エイプリル艦橋内で戦闘の様子をモニターで見ながらリケンベ中佐は呟いた。
「今さらやり直しはきかない。やるしかないでしょ?」
指揮席からライス艦長がニヤリと笑う。
『ミナ、ここの連中は他の部隊に任せる。俺たちはファントムを追うぞ』
「了解、ハーネットさん」
2機のFガンダムがサラミスから飛び立った。
発進直後の進路コースにリックドムが立ち塞がる。
「こいつ! こんな所に……」
ドムのバズーカが発射された。ミナのFガンダムは寸でのところでバズーカ弾を避ける。
「避けた! これを?」
直撃を確信していたドムのパイロットが焦って2回目の照準をつける。
「運が無い……」
ミナは冷静にトリガーを引く。粒子ビームはリック・ドムの機体を貫いた! 巨大な火球が広がっていく。Fガンダム
はその先端に巻き込まれた。スクリーンが一瞬ホワイトアウトしたがすぐ元に戻っていく。
『大丈夫か? ミナ』
寮機の無事を気にしたハーネットのFガンダムが火球に接近した。火球の中からはミナのFガンダムが無傷で飛び
出した。
「平気……行けます」
2機のFガンダムはアフターバーナーを吹かすと"ファントム"を目指した。
スワイン隊を抑えてサラミス迎撃にファントムは後方の異変に気がついていた。
「何が起きてる? ちぃ! ミノフで通信が使えん」
カメラを後方に回す。モニターにノイズ交じりの映像が出た。船団のいた付近で光の線が交差するのが見えた。
「戦闘か? スワインめ、上手くやれなかったという事か」
モニターを見つめながらファントムは舌打ちした。
一方サラミスの甲板で待機していたデイモン大尉のFガンダムが長距離ライフルを構えて接近するモビルスーツを
待ち構えていた。
『大尉、いけますか?』
サラミス艦橋から通信が入る。
「ああ、やれる。任せとけって」
長距離用のレーザーサイトで照準を合わせる。モニターに映る接近するモビルスーツが鮮明になっていった。
ゲルググ?
「おおっと、"ファントム"かよ」
Fガンダム1号機に搭乗していたデイモン大尉は照準をつけながらニヤリと笑った。
照準モニターに黒いゲルググが映し出される。
「落としはしねえが……腕一本もらうぜ!」
デイモンはゲルググの腕に照準を合わせると引き金を引いた。
高出力の粒子に包まれたルナチタニウム製の甲弾が発射される。数秒後ゲルググに到達した。弾道が黒いゲルグ
グの飛行コースに重なった。デイモンは直撃を確信する。
「ないんだよ! 殺意ってヤツがさぁ」
黒いゲルググは僅かに機体をずらして攻撃を避ける。
「ちっ! やっぱ一筋縄ではいかねえなぁ」
デイモンは冷静にライフルに第二弾を装填した。
宇宙空間に交差するビームの閃光とミサイルの残光。
それを背景に連邦軍のモビルスーツ群が飛び出していく。
「散開してファントムを包囲する。奴は手強い。各機心してかかれ!」
指揮機の合図に連邦軍のRGM−79ジムの編隊は間隔を広げていった。
その編隊の中心にはFガンダムがいた。
「追いつくぞ、ファントム」
ミナはFガンダムに装備していたモビルスーツアサルトライフルMA−80Sをビームから弾丸に切り替えた。
「炸裂弾じゃないから落とす事はないけど……」
致命傷を与えなければ逆襲があるはずだ。
「確実に狙撃しなければ」
ミナは一瞬、気を抜くと戦闘宙域に到達するまで深呼吸をした。
『ミナ』
ハーネットからの通信でミナは目を開け再び集中する。
「はい」
『大尉がファントムを狙撃中だ。援護するぞ』
「りょうか……ハーネット!」
強烈な敵意を感じたミナはその方向を見た。
「小さいな」
そこから粒子ビームが数発、ハーネットに向って放たれる。
「側面から? くそっ!」
ビームは装甲シールドに直撃し吹き飛んだ。爆発の反動で大きく機体押されるハーネットのFガンダム。
「つまらんところから出てきやがって!」
ハーネットのFガンダムはガトリングガンを構えて敵を探した。
『ハーネットさん、上です!』
「あん?」
2個の遠隔狙撃機ビットがモニターに映った。
「こいつか」
ガトリング砲で弾幕を張りひとつを撃破した。
ミナは敵意の放出先を追った。
頭の中に映像が流れ込む。
「モビルアーマー? これは」
黒くカラーリングしたモビルアーマーがミナたちの前に立ち塞がった。
「誰も僕の"ファントム"を傷つけはさせない!」
23個のビットが宇宙空間に展開し強烈な敵意も四散していった。
そしてそれは連邦のモビルスーツ群を覆いこんでいった。
「どこだ! ガンダム!」
遠隔狙撃兵器ビットから放たれる粒子ビームはRGM−79ジムを狙撃していった。
三機のジムが一瞬に撃墜される。
「なんて奴だ」
敵の姿を追うハーネットの頭上をミナのFガンダムが通り過ぎる。
「ミナ!」
『この敵は私を追っている。引きつける』
ミナのFガンダムは敵の位置が分かるかのように一直線に飛んでいった。
ハーネット機の傍に部隊のRGM−79ジムがやってきた。
『どうする? ハーネット准尉』
「俺はミナの援護に向う。あんた達はファントムの捕獲に回ってくれ」
『わかった』
2機のモビルスーツは別々の方向に飛び去った。
モビルアーマーのコクピットの中でミハエル・ヘンデは強烈なプレッシャーを感じていた。
「あいつか?」
覚えのある強烈な意思を感じたエンジェルは僅かだが恐怖を感じた。彼にはそれが許せなかった。
「やられるか……ビットたちよ!」
ジムたちを攻撃していたビットは主の命令でモビルアーマーに吸い寄せられる様に集まっていった。
拡散していた敵意がひとつになっていく。
ビームライフルを構えビットの防衛網に飛び込んでいくミナ。
「いけーっ! ビットたち」
23のビットは一斉に攻撃を開始した。ビームがFガンダム一点目指して打ち込まれていく。Fガンダムはシールドの
中に身を入れる。ビットの放ったビームは恐るべき正確さで一点に直撃した。
「やった!」
強烈な意思は消えた。ヘンデは狙撃の成功に浮かれた。
しかし強烈な意思は再び現れた。それはまったく別の位置からだ。
「何で?」
それは急速に大きくなっていく。ファントムはそのプレッシャーに焦りを覚えた。
「奴は気配を操れるのってか?」
Fガンダムはモビルアーマー目指し更に加速した。
「感度が良すぎる奴め。そういうのって!」
ミナはMA80ライフルの照準をつける。
モビルアーマーはガンダムを迎撃すべく再度ビットをコントロールした。
「操作するビット多すぎる……くそっ! 半分、いや! 3個に集中すれば」
コンピューターがヘンデの脳波を感知して命令を超高速で計算していった。指示を出すビットの数を減らし計算処理
速度が上がる。
ミナは意識を集中させた。
「その敵意は闇の中で火を焚いているのと同じ! どこからでもわかる!」
トリガーが引かれビームライフルから粒子ビームが放たれた!
3個のビットがモビルアーマーを守るように移動しビームを発射する。
二つの高エネルギーが交差した。
高粒子ビームがFガンダムの左肩を吹き飛ばした。白い腕と部品が宇宙空間に吹き飛ぶ。
振動がコクピットを揺らしたがそれが致命的でない事はミナにはわかっていた。
モビルアーマーにFガンダムの放ったビームが直撃する。ヘンデの目の前の計器表示が一斉にレッドに変る。
「直撃? こんな奴に、こんな……」
爆発の炎に包まれるモビルアーマー。
周りにいた主人を無くした小型攻撃兵器たちは糸の切れた人形のように宇宙に漂い始めた。
「……そいうのって自分の影に怯えるのよ」
Fガンダムは機体を翻すと先行した部隊の後を追った。
その先には"黒い亡霊"がいた
宇宙の闇に棲むジオンの悪意が。
|