20、追撃


 交差する2機のモビルスーツ
 ゲルググとガンダムは高速で撃ち合いながらすれ違いながらも、ぎりぎりの所でお互いの狙撃を交わした。
「やるな」
 遠ざかるガンダムをモニターで見ながらファントムは呟いた。
 ガルググはそれを追うべく反転する。その時、背後から敵意を感じた。反射的に上昇すすると上方に弾道が見え
る。狙撃だ! それも一方向からではない。

 囲まれてるってのか!

 また方向転換をして狙いをつけさせないように試みたが背後を追うように狙撃されている。ファントムは追い込まれ
てる気がしていた。
「ヘンデはどうした? 援護は!」
 苛立ち気味に言うファントム。その時頭の中で声が流れた。
"分かっているだろ?"
「何がだ?」
 ファントムはヘンデの気配を感じなくなっているのに気がついた。
「落とされたってのかよ、小僧」
 当てにしていた戦力の消失にファントムは苛立った。
 ガルググから幾つかのカプセルが放出された。宇宙空間を数秒漂った後、それらは爆発し強力で特殊な光と電磁
波を放つ。ある程度の距離に近づいていた連邦のモビルスーツはモニターからゲルググを一瞬、ロストしてしまう。
 僅かの間、攻撃をしのいだファントムはデブリ帯に方向を変えた。
 障害物の多いそこなら勝機の可能性がある。それと逃げ切れる可能性も高くなるからだ。

 ミナのFガンダム3号機は破損して漂うガンダム1号機に近づいていった。
「大丈夫ですか? 大尉」
 ガンダムの腕を1号機の機体に触れて通信を試みた。
『ああ、はやく奴を追え。今が最大のチャンスだぞ』
「でも」
『救難信号は出してる。いいから行け! リトル。でないと、もうバースディプレゼントはやらんぞ』
「は、はい」
 バーニヤを噴射させてFガンダム3号機がそこから離れていく。コクピットのデイモン大尉はヒビの入ったモニターか
らミナのガンダムを見送った後、シートに深く倒れ掛かった。

 ファントムを追い、デブリ帯に向うミナのFガンダム。その周辺にRGM−79ジムの部隊が追随する。
 その後方で爆発が起きたのをミナは気がつかなかった。


 艦橋に爆発が起こった。
 サラミスの放ったメガ粒子砲が直撃したのだ。大きく傾きながら戦列から離れていくムサイ級巡洋艦。反撃の射撃
もできない。
「敵艦一隻沈黙させました!」
 エイプリルの艦橋にどよめきが起こる。
「まだ敵は残っている。気を抜くな」
 艦長ライス中佐が強い口調で言う。
「連中め、諦めが悪い」
 隣でリケンベが言った。
「帰る所の無い艦隊です。そういう決意なんでしょう」
 破損した区画から報告が入りその応対に入るライス。その時、視界に突っこんでくる何かが見えた。
「リック・ドム?」
 弾幕を信じられない俊敏さでくぐり抜けた一機のリックドムタイプのモビルスーツがエイプリルの艦橋目がけて突っ
こんでくる。
「弾幕!」
 そう言った瞬間、ライスの目の前が真っ白になった。
 エイプリルの艦橋付近が爆発を起こした。船体が大きく沈み込んでいく。
 

 逃げ込る黒いゲルググを追ってRGM−79ジムの小隊がデブリ帯に入り込んでいった。 障害物の多さにモビルス
ーツの速度も落とすしかない。辛うじてゲルググを目視していた小隊の隊長は部隊を広げて追い込むことにした。し
かしそれはファントムの狙い通りだった。
 デブリ帯に近づくミナ。
 幾つかの爆発が見える。
『ファントムを撃墜したのでしょうか?』
 追随していたRGM−79のパイロットから通信が入った。
「いえ、あいつはまだ落ちてない」
『突入ですか?』
「え…?」
 指示を仰がれている事に気付いたミナはその時、自分が一番階級が上だというのに気がついた。隊長機クラスは
いつの間にかいない。逸れたかファントムに落とされたかだ。
「デイモン大尉……」
 自分の隊の指揮官であるデイモンもここにはいない。恐らく先行しているであろうハーネットの姿もない。

 どうしよう? こんな時はどうすればいい? デイモン大尉だったら……大尉だったら……

 ミナは落ち着いて周囲を見渡した。
 デブリ帯に逃げ込んだのは戦力差を無くす為だ。追う自分達は動き回るのに対してファントムは待ち構える事もでき
る。突入はリスクはあるがこの機会は逃せない……

「手を汚さず宝物を手に入れるというのは幻想」
『はあ?』
「突入する! 但し無闇に突っ込むな。デブリに機体を隠しながら慎重に索敵する。よろし?」
『了解!』
 Fガンダムを先頭にモビルスーツ部隊はデブリ帯に侵入していった。




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