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車内に到着を告げるアナウンスが流れる
列車はゆっくりと速度を落としていく。
「今年のKENKA鉄道は静かだったなあ」
車掌は帽子を被ると列車のドアを開けるといきなり顔中腫れ上がった男が倒れ掛かってきた。
「た、たすけて……」
「どうしたんですか!」
寄りかかる男を支えながらその背後の光景を見た車掌は驚愕した。
「なんだこりゃあ! 嵐の後か?」
車両の中の無法者の客たちは皆、ボロボロになって倒れていたいた。
ある者は白目を向いて、ある者は顔に青あざを作っている。ある者は身体を九の字にして呻いていた。無事な者は
一人もいない。
車掌が唖然としていると席の間の通をキーラたちが歩いてくる。
「いや〜ようやく着いたね、クリス」
「もう始まってるよね。早くいこ♪ キーラ」
「キーラさんって強いんですね。驚きましたよ」
「あはは♪ ちょっとキレちゃった」
そう言いながら平然と車掌の横を通り過ぎる三人。
車掌は好奇の目でそれを見送った。
駅から出ると目の前に巨大なスコップが大地に突き刺さるオブジェが目に飛び込んできた。
「わ〜っすげ〜」
驚きでそれを見上げる三人。おそらく100m近くはありそうだ。
「さすが音楽の祭典"ウッド・スコップ"。やるわね」
変な感心をしつつ、キーラは辺りを見渡した。
会場はいたるところに出店があって食べ物を焼いた良い匂いが漂ってくる。流れてくるのは何種類かの音楽。どう
やら幾つかの場所に別けて舞台が設けてあるようだ。
「さーて、何から見る?」
「私、レゲエがいいなー」
「おっいいねー、それいく?」
クリスタルは嬉しそうに頷く。
「あっ。ところであなたは…えーと」
若者は気がついたように顔を上げた。
「そういえば、名前を名乗ってないですよね」
「そうよね……ああ、私の名前はキーラ。魔法使いやってます」
「クリスタルです。同じく魔法使いでーす」
「魔法使い? すごいな」
「別にすごくなんかないよ。あなたみたいに楽器弾けないし」
「でも魔法があればそんな事も簡単にできるんでは?」
キーラは人差し指を横に振った。
「それが違うんだよねー。楽器は魔法で弾けてもあなたみたいな素敵なメロディを生み出す事はできない。真似る事
はできるんだけどさ」
「そういうもんなんですかぁ……」
「ところであなたの名前は?」
「すみません。私の名前はフォウといいます。フォウ・サマーです」
そう言うとフォウはずれた眼鏡を掛けなおす。
「フォウ・サマー?」
キーラとクリスタルは顔を見合わせた。
「何か?」
「え? まあいいか……別に! それよりフォウさんはどこの会場に行くんですか? よかったらご一緒したいなーな
んて」
「えーっキーラ、レゲエ会場に行くんじゃないのーぉ」
クリスタルがホッペタを膨らませてブーイングした。
「いや、ほら、それは…旅は道連れって……ごみんっ! クリス」
「キーラさん、クリスタルさんは行きたい会場があるみたいだし…無理して付き合ってもらうなんてちょっと心苦しいし、
それに……」
「無理なんてとんでもない!」
「私、無理!」
そう言って口を尖らすクリスタル。
「もう、わがままっ子!」
フォウは困り顔で紙切れを差し出した。
「実は僕、このイベントで開かれるコンテストにエントリーしてるんです」
「あ…? じゃあ演奏家なの?」
「そんな大それたもんじゃないけど。みんなの演奏を聞いてみたいけどちょっと緊張してしまって楽しめないと思うし…
…会場を見て回るのは出番が終わってからにしますよ。それまでは何処かで練習をしておこうかと」
「そうなんだぁ……」
「コンテストは今夜です。これ、エントリー表。この順番で演奏していきますんでよかったら見にきていただけません
か?」
そう言いながらフォウは眼鏡を掛け直した。
「絶対応援に行きます! がんばってくださね!」
紙切れを奪い取る様に受け取るとキーラフォウの手を握った。
「あ、はあ、はい。キーラさんとクリスタルさんも楽しんでくださいね」
「は、はい」緊張気味に返事をするキーラ。
「はーい」対してクリスタルは呑気に答える。
その後、フォウは人ごみの中に消えていった。
「く〜っ、きたよ、きたよ。クリス」
「確かによく見るといい男よね。曲もよかったし」
「やばいよ、クリス。今、あたしの頭の中に流れるのはラヴソングだけ♪」
クリスタルは呆れ顔で肩を竦める。
「そんなことより、早く会場にいこ」
キーラの手を引っぱるクリスタル。
「ちょちょちょとクリス。余韻に浸らせてって、余韻に〜っ」
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