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 頭上を飛びまわっていた蝙蝠の群れは林に向って飛んでいった。
「姐さん! いましたぜ」
 入れ替わりに林の中からモヒカン刈の男が飛び出してきた。
「あん? あんたらは……」
 後ろからゾロゾロと湧いてくるように似たようなファッションの男たちが現れてキーラたちを取り囲む。
「見覚えあると思ったら列車のハードコア軍団……まったくいいところで……」
 そういいながらキーラは額を押さえる。
「あいつです! 青い髪の魔法使い」
 キーラは林の中から強烈な敵意を感じた。誰かのシルエットが見えてくる。どうやら只者ではなさそうだ。
「こいつ? 何だか話に聞いたよりきゃしゃだねえ」
 真っ白い肌に黒いアイシャドウ。ファッションはダーク系で嘘みたいに高い厚底ブーツを履いている。おへそのあたり
のタトゥーが目立つ。完璧、悪魔系だ。
「誰?」
「あたしは黒い魔法使いバルゼヴヴ・ラヴィーン」
 そう言ってラヴィーンは持っていた鞭をビシっと引っぱり音をさせた。
「あたしの下僕たちが世話になったみたいだね。ちょっと"お礼"にきたよ」
 ラヴィーンはお礼と言ったが随分と荒っぽい礼になるな、とキーラは思った。だいたい鞭を鳴らしながら威嚇するお
礼はない。 
「あなた、私の知ってる"黒い魔法使い"とは大違い」



「くしゅん!」
「お客さん、風邪っすか?」
 頭にタオルを巻いた出店のおじさんが声をかける。
「いや、風邪じゃないとは思うんだけどね」
 イカ焼きを受け取ったクリスタルは鼻をこすりながらそう言った。
「きっと誰かが噂してるんだと思う……クシュン!」



 皮製の二つの鞭が空気を切り裂いた!
 キーラはぎりぎりの所で避ける。
「危ないわねーっ」
 キーラは転がる枝を足で蹴り上げた。棒は宙を飛びキーラの手に収まる。
「来な」
 棒を片手で構えると反対側の手で手招きした。
「小癪!」
 鞭が飛ぶ! キーラは棒を鞭に当てさせ巻きつかせる。
「ちぃ!」
 お互い引っ張り合い鞭はピンと張られた。不意にキーラは力を抜き鞭の張りが緩まった。
「うわぁ」
 思わず前につんのめるラヴィーン。
 その隙を見てキーラは棒を地面に突き刺すと宙に飛んだ。見上げるラヴィーン。しかしキーラの姿はなかった。背後
に気配を感じる。懐にあったもうひとつの鞭を抜いた。
「おっと!」
 背中からの奇襲を試みたキーラはラヴィーンの反撃にバック転で退いた。
「やるじゃない」
 キーラは服についた砂を払いながら言った。
「お互いにね」
 ラヴィーンは不敵な笑みを浮かべた。
「いくぞ!」
「こい!」
 互いに向って突進する二人。ラヴィーンが一撃を加えようとしたその時だった。
「あっ」
 キーラは視線を外してラヴィーンの後ろを指差した。
「えっ?」

 バチーン!

 よそ見をするラヴィーンの顎にキーラの右拳の一撃が入った。
「……ひ、ひきょうな」
 キーラの足元に倒れるラヴィーン。
「手間をかけさせて〜もうっ!」
 痺れる右手を振りながら大きく息をついた。


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