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「何してたの? キーラ。フォウさんの出番、もうすぐだよ」
会場にかけつけたキーラは息を切らしてクリスタルのそばにやって来た。
「はあ、はあ、ちょっと邪魔が入ってさぁ」
「何でもいいけどせっかく友達になったんだから聴いてあげないと。はい」
そう言ってクリスタルはビールの入ったカップを差し出した。
「ありがと、クリス……ってあんた飲んでるぅ?」
クリスタルはニコニコしながら身体をくねらせ踊りだした。
「えへへ、なんかこの方が楽しいし」
「人が苦労しているときにこの女……」
「まあ、まあ、文句言ってるより呑むさ」
キーラは苛立ち紛れにビールをぐいっと一口飲んだ。
「ぷは〜っ」
「おっ! キーラいいぞ♪」
コンテストは次のエントリーナンバーと名前を告げた。
フォウ・サマー。
待っていた名前だ。
「ほらキーラ、フォウさんの出番だよ」
キーラは飲むのを止め舞台を見た。
『これは僕が恋する女性への気持ちを歌にしたものです』
拡声器でそうフォウの言葉が響く。
「聞いた? キーラ。好きな女性にだって! きゃー! フォウさん、やるーっ」
「好きな女性にだなんてぇ」そう呟き顔を赤くするキーラ。
「ん? 何であんたが照れるの? キーラ」
「ええー、だってぇー」
キーラの顔は緩みっぱなしだ。
心地よいギターのイントロが、歌が始まった。
囁きかけるように続く言葉。
それは人を好きになった者が共感する"やさしい気持ち"。
やがて歌が終わり、しばらくの余韻の後、拍手と歓声が空きあがった。
「素敵だったね。ん? キーラ泣いてんの?」
「うん? なんかわかんないけど涙が出てきちゃって」
「わーキーラなんかカワイイ」
「うるせーよ」
やがて表彰が始まった。
勿体つけた司会者の前振りの後、優勝者の名前が読み上げられた。
「優勝はフォウ・サマー!」
会場は大歓声に包まれた。
トロフィが渡されインタビューを受けるフォウ。
『フォウくん。これって好きな女性に贈った歌だよね。もしかして彼女はこの会場に来てくれるのかなぁーっ』
わざとらしく聞く司会者にフォウはちょっと間を開けて頷く。
場内にお〜っという歓声が起きた。
『マジでえーっ。じゃあ、フォウくん。この際だから会場にいるその彼女に一言いってみるーっ?』
冷やかしの声が上がった。
また少し間を開けた後、フォウは口を開いた。
『君に逢ったとき、僕の心に君が焼きつきました』
会場に響くその言葉にキーラは心臓が飛び出すくらいドキリとした。
「よっぽど好きになったのねー、フォウさん」
隣でビールを飲みながら呑気に言うクリスタル。
「ど、どうしよう! クリスタル」
「はあ? あんであんたが焦るわけ……え? もしかしてフォウさんの好きな女性って!」
『あなたが……』
「きゃーどうしようクリスタル! すっげー照れるんだけど」
「落ち着いて、落ち着いてキーラ。ほらこれ飲んで」
「う、うん」
ビールを一気に飲み干すキーラ。
『好きです!クリスタルさん!』
響き渡る言葉と盛り上がる会場。
「そっち……?」
固まるキーラの手から、ポトリとカップが落ちていく。
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