21、ハイパーゲルググ
二稿目

 宇宙戦闘艦の残骸漂う宙域で光が交錯していた。
 中で大きな爆発が起きる。衝撃は傍に浮いていた金属とプラスチックの塊を吹き飛ばした。
「トラップだ! 各機、注意しろ!」
 ミナは引き連れたジム部隊に注意を促がした。
『准尉! いました! ファントムです』
 左に付けていた一機のジムがファントムを補足した。
「ズールー1、ズールー2! 自分に続いてファントムに向けて掃射! 中央のマゼランの残骸に追い込む。後の機
はファントムを囲め!」
『了解!』
『了解』
 ミナは逃げようとするゲルググに照準を合わせた。
「味方には当てるな! 撃て!」
 Fガンダムとジム隊がライフルの狙撃を始める。それを合図に残りのジムたちはゲルググに追い込みをかけ始め
た。
 周囲から接近するジムに気付き、狙撃の体勢を取ろうとするゲルググだったがその機を狙ってミナの狙撃が邪魔を
した。
「ちぃっ!」
 体勢を崩し狙撃から逃げるため移動するゲルググは徐々に追い詰められていった。狙撃をかいくぐって逃げ道を探
すファントムは次第に苛立っていた。
「まったく、ムカつくやつらだぜ! ん?」
 逃げ道を探すファントムの目の前に別のFガンダムが姿を現した。
「まってたぜ! ファントム」
 ガトリング砲を構えたガンダムは向ってくるゲルググ目がけて発砲した。無数の薬莢が宇宙空間に飛び散っていく。
「こいつ! どっから来た!」
 ぎりぎりのところで狙撃を交わすファントム。しかしガトリングガンの弾丸はゲルググの機体の一部を打ち抜く! 炸
裂弾ではない為、小規模な爆発で収まったもののゲルググは反動でマゼランの残骸の艦底部分に衝突した。衝撃
で脆くなっていたマゼランの装甲が飛び散っていく。
「ハーネットさん!」
『よう、ミナ。手伝いはいるか?』
 ハーネット機の背後から友軍のジム部隊が姿を現す。ジムたちはゲルググの周りを囲み始めた。
 ハーネットのFガンダムはガトリングガンを黒いゲルググに向けたままでミナのガンダムに接近していった。
『追い詰めたな。後は機体を押さえるだけだ』
「はい、ハーネットさん」
『ところでお前の機体、左腕がないぞ』
「へへ、ドジりました。でも右腕は使えますよ。ライフルも撃てます!」
『上等だ。いいか? 俺たちがゲルググを押さえる。変な動きがあったら奴を狙撃しろ』
「了解」
 ハーネットのFガンダムはガルググに向って通信用のレーザーを照射した。照射されたゲルググのコクピットにFガン
ダムからの音声通信が入る。
「ゲルググのパイロット! お前に勝ち目は無い。大人しく投降しろ。こちらには貴官を上級士官待遇で受け入れる用
意がある」
 その通信を聞いていたファントムは笑った。
「ふふふ……投降か」
 ゲルググは構えていたビームライフルを放り投げた。ライフルはそのまま漂うデブリに中に流れていく
「よーし、いい子だ。ゲルボーイ」
 投降の意思ありと判断したハーネットが他のジム2機と一緒に用心深くガルググに接近していいった。
 しかし彼らは気付いていなかった。ゲルググの背部に取り付けられていたコンバーターが作動し始めていた事を。
「そのまま動かず。コクピットを開放しろ」
 呼びかけるハーネットに黒いゲルググは何も反応しなかった。動きのない外面とは裏腹にコクピットの中ではファン
トムが慌しく装置の操作を始めていた。
「核融合炉開放。BVコンバーター接続……冷却装置最大。ナノビット散布開始……出力120%まで上昇」
 ファントムは装置に繋がるコードをヘルメットに接続していった。
「聞こえてるはずだ。コクピットを開け!」
 ゲルググに呼びかけるハーネットはFガンダムにガトリングガンを構えさせた。周囲のジムたちのそれに呼応する。
 その様子を見守っていたミナは嫌な違和感を感じていた。
「おかしい。あのゲルググのパイロットが、こうも素直に……」
 ハーネットたちがゲルググへの接近を数十メートルまでにした時だった。ハーネットはゲルググの周囲の変化によう
やく気がついた。
「なんだ?」
 ゲルググの周りに何かがショートした様な小さな火花が散っている。それは次第に数を増していった。ガンダムのモ
ニターにもノイズが増えていく。
「各機! 待機! 待機だ」
 ハーネットは直感で危険を察知し、寮機となっていたジム2機に呼びかけた。しかし通信も障害を起こしジムには伝
わらなかった。そのままジム2機はゲルググに接近を続けてしまう。
 コクピットでファントムは近づく獲物に、ほくそ笑んでいた。
「対ビームバリヤーは別の使い方もある」
 ゲルググの周囲が発光しだしていた。ようやく二機のジムも異変に気付いた。
「何かヤバイ! さがれ!」
 ハーネットは叫んだ。
 しかしまだ二機のジムはライフルを構えたままゲルググの様子を伺っていた。
 ガルググの機体がスパークしたが如く強烈な光を放つ!
 その光に巻き込まれたジムは機体の殆んどを一瞬で分解され爆発した。
 ハーネットはバーニヤを逆噴射して必死に光から逃れようとした。しかし光に追いつかれたFガンダムの機体が分解
していく。
「くそぉ! なんだってんだよ!」
 Fガンダム2号機が爆発を起こした。
「ハーネットさん!」
 その光景を見たミナはガンダムのコクピットで叫んだ。
 モビルスーツの爆発が小さくなりゲルググの姿が見えた。強烈な青白い光に包まれたゲルググ。それはまるで光
の風がゲルググを覆っている様にも見えていた。
「はっはーっ! 連邦のザコども! このハイパーゲルググを甘く見るなよ!」
 ゲルググの背に取り付けられたコンバーターの一部が回転を始めていた。その回転は徐々に速度を上げていく。そ
れに連動するかのようにゲルググを包む青い光の風は渦を巻き膨張していった。
「ファントム……バリヤーを増強してコントロールさせてる?」
 ゲルググの異変に驚き、対処に遅れるミナ。他のジムのパイロットも同じ同じようなものだった。

(逃げろ! ミナ! )

 その時、ふいに誰かに声がミナの頭の中に響いた。
 他の機の通信? いや……どうでもいい! あれは危険だ!

 ようやく我に返ったミナはバーニヤを噴射してそこから離れようとした。
「各機! 周辺宙域から離脱! 急げ! 急げ!」
 バーニヤを全開にするミナのFガンダム。他のジム隊も追随し始めた。しかし対処の遅れた多くのRGM−79が光の
渦に巻き込まれていく。ジムが次々を爆発を起こしていった!

 (そんな! )

 離脱しながら悲惨な状況を目にするミナだったがどうすることもできない。しかも光の渦はミナのFガンダムを追って
いく。それはゲルググの巨大化した手の様の形態をさせていた。
「だめだ! 追いつかれる!」
 ファントムの悪意というべきバリヤーはまるで生き物の様にFガンダムに襲い掛かった! 光の渦に巻き込まれるミ
ナのFガンダムは機体の分解を始めた。

 (死ぬの? わたし……) 

 急激な振動と操作パネルから放電する光がミナを包み込む。
 襲う不安と恐怖にミナは思わず目を閉じてしまう。
 その時だ。ミナの耳に聞き覚えのある声が入った。

 (だめだ! 彼女を殺すな!)

 叫び声にも似たその声にミナは再び目を開けた。
「ロウ?」



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