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叫び声にも似たその声にミナは再び目を開けた。
「ロウ?」
ビジョン化したバリヤはミナのFガンダムに接触寸前で止まっていた。しかしその強大なエネルギーは放電を起こし
Fガンダムの装甲に干渉している。
『ミ……ミナ……』
機体越しに入ってくるのは確かにロウ・モリガンの声だった。
ありえない!
目の前の悪魔の様な機械に乗り込んでいるのはあの優しいロウ・モリガンなわけがない。だいたい何でストリート
で絵描きをしているロウがジオンのモビルスーツに乗っているのか?
ミナの頭は混乱した。
「本当にロウ?」
しばらく間を置いた後、ロウの言葉が再び聞こえる。
『ミナ……早く逃げてくれ。こいつをこれ以上押さえきれない』
「こいつ?」
『もう一人の僕……ファントムだ』
「ファントムがあなた?」
『早く……』
Fガンダムはバーニヤを噴射させ後退した。バリヤはそのまま停止して追撃はしてこない。
ミナはハイパーゲルググの姿を見つめながら考えていた。
本当に彼?
ゆっくりと離れていくFガンダム。
通信用のレーザーをゲルググに向ける。バリヤで覆われたゲルググに正常な通信ができない可能性もあったがそ
の心配はなかったがそれはいらぬ心配だった。雑音混じりだがミナの通信はゲルググに届いていた。
『ロウ?』
「ミナ……」
ロウ・モリガンは虚ろな目で通信のスイッチに切り替えた。
「ミナ」
『ロウ。なんであなたがモビルスーツに乗っているの?』
「話せば長くってね」
『そこから降りて』
「そうしたいところだけど、もうひとりの僕が邪魔するんだよね」
『もう一人の?』
「ああ、ファントムっていう嫌な奴でさ」
『もうやめよ? こんなことやめるのよ』
「そうだね……僕もそうしたいんだけど。くそっ! こんな事なんてしたくないんだ!」
ゲルググが再び動き始めた。それに気付いたミナはMA80アサルトライフルを構えた。
「ロウ! くっ」
Fガンダムはゲルググに照準を合わせた。
しかしゲルググのビジョン化したバリヤはその勢いを小さくしていく。数秒後、バリヤは消えていた。
『撃て! ミナ! ゲルググを撃て!』
その通信にミナは戸惑う。
「そ、そんな事できない!」
『早くしろ。ファントムが僕の身体を乗っ取ろうとしている……今のうちに!』
「でも」
『早く!』
「できない!」
その時、ミナのFガンダムとロウのゲルググの間に大破したモビルアーマーが割って入った。
「そうはさせないよ!」
モビルアーマーに装備されたメガ粒子砲がFガンダムに向けられた。照準をゲルググに合わせていたMA80アサル
トライフルは突然の標的に対応できなかった。
「さっきはよくもやったな。でもいいさ、お返しはしっかりするからさぁ!」
ミハエルはトリガーに指をかけた。
「死ね! ガンダム!」
しかし、モビルアーマーは背後から強烈なエネルギーを浴びた! 回路が一瞬でショートする。メガ粒子砲はその
機能を止めた。
「なんで? ファントム……」
引き連れた生き残りのビットが防衛行動を起こす。バリヤ内に侵入したビットの粒子ビームがガルググに向って集
中砲火を浴びせた。ビームがゲルググの機体の何ヶ所かを貫く! 機体の一部が爆発を起こしコクピットを襲った!
「うっ!」
その時、ロウの眼つきが変った! 生命の危機を感じたファントムがロウの人格を奪い取ったのだ!
ゲルググは瞬時にビームナギナタを振り回すとバリヤ内に侵入していたビットを一瞬で切り捨てた。
「小僧! 何しやがる!」
ファントムの人格になったロウは再びバリヤを増幅させる。強烈な殺意はエネルギーの塊となりミハエルのモビル
アーマーを襲った。バリヤーのエネルギーに包まれたモビルアーマーの機体は一瞬で押しつぶされ爆発を起こし た! ピンクの火球が宇宙空間に広がっていく。
「ちっ! ハメやがったな……ロウの奴」
ファントムは熱くなったわき腹を見た。ノーマルスーツから真っ赤な血が染み出ている。
「痛てえじゃねえかよ……こんな時に身体を回しやがって……」
苦痛がファントムを襲う。痛みで意識が遠のきそうになった時、ロウの人格がファントムを押しのけた。
被弾したゲルググはバリヤーを解除し静止していた。機体の破損部からスパークした電流の光が見える。
「ロウ!」
ミナのFガンダムは戦闘力の無くなったゲルググに接近する。
『やられた……撃たれるって痛いんだな。初めて知った』
「怪我をしたの?」
『ああ、腹から血が出てる』
FガンダムはMA80ライフルを放り投げると残った腕でゲルググの機体を掴んだ。
「な、何をする?」
Fガンダムはバーニヤを噴射すると被弾したゲルググを連れて残骸漂うデブリ群に進路をとった。
「機体を固定させる場所を探すの。治療をしなくっちゃ……」
連邦とジオンの2機のモビルスーツは寄り添いながら漂う宇宙戦艦の残骸の中に入っていった。
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