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4、もういちど
ゲームセンターの片隅に設けられた場違いな小さなテント。
再び啓太はその場所に来ていた。
「いらっしゃいま……あら? いつかの彼じゃない?」
テントの中では紗璃がカップ麺(塩味)の蓋を開けるところだった。
「よく食べてますよね。そなに好きなんですか? カップ麺」
「そ、育ち盛りなのよ」
顔を赤くしてカップ麺をテーブルの下に隠す紗璃。
「どう? 上手くいった?」
「ええ、まあ……」
啓太の後ろからいずみが顔を出して軽く会釈した。
「あら? 占いで出たとおりの感じのコ。ここに一緒にいるって事は成功みたいだったようね」
茶化しながら迎える紗璃だったが二人の表情は深刻そうだった。紗璃はそれを察した。
「何かあったん?」
啓太は深刻そうな顔で口を開いた。
「今日は、この相葉さんを占って欲しいんですけど」
紗璃はその怯えた様な態度を不審に思いながらも二人を椅子に座わらせた。
「何があったの?」
少し間をおいた後、相葉いずみという少女は経緯を語りだした。
「あの朝、啓太くんに声をかけてもらって事故に合わなかった」
紗璃は相槌をうつ。なにしろあれは紗璃の占いで救えた事だ。
「本当に助かりました。でもあれから危ない事が続くんです」
「危ない事?」
「はい。事故に巻き込まれそうになったり、工事中のビルから何かが落ちてきたりとか、階段を降りていたら手すりが
いきなり壊れたり、変なおじさんにつきまとわれたり」
「最後のは危なさの種類が違うわね」
「ちなみにそれは警察に通報して解決しました」
啓太が口を挟む。
「でもあまりにも命に関わりそうな事が多くて。だから、紗璃さんに運勢を見てもらおうって僕が言ったんです。ほら、
紗璃さんってなんかスゴイから」
「いや、すごいだなんて……ところで少年さぁ」
紗璃は啓太の耳を引っぱり自分のところへ引き寄せた。
「痛てて、なんですか?」
「あんた、ちゃんと告白ったの?」
紗璃は、いずみに聞き取れないような小さな声でそう言う。
「え? 告白って……いやそれが」
「じゃあ、実は特に進展なしって事なの? おい」
「進展がないってわけじゃ……仲良くは慣れたんですよ。ずっと親近感で。けど、なんか言い出しにくくて」
「あちゃぁ……だからか」
紗璃は片手でおでこを押さえた。
「何か知ってるんですか? 紗璃さん」
「いや、はっきりとは。けれど大体想像はつく。今からそれを確かめましょ?」
紗璃はカードを取り出すとテーブルの上に円を描くように広げた。
「さ、彼女。一枚ずつ取って左から順に並べて」
言われたとおり、いずみはカードを取って並べ始める。
全てを並べ終えた後、紗璃は言った。
「やっぱりね」
「何ですか?」
いずみは不安そうな顔で紗璃を見た。
ため息をついて紗璃は話し始めた。
「いずみさん。あなたは本来は事故で命を落とすところだったの。それをこのガキ……いや啓太くんが止めたのよ。け
れど、運命は急な変化に対して拒絶反応を示した。そして軌道修正を行なう為に"ある現象"が発生したってわけよ」
「ある現象って?」
「形容はいろいろだけど、一番合っている言い方は」
いずみと啓太は真剣な顔で紗璃を見た。
「死神」
紗璃はそう言った。
「はい?」
「いや、だから死神」
「またまた」
「本当だって!」
「ま、まじですか? でも死神……って?」
眉を顰めて紗璃を見る啓太。
「何? その目。その言い方が一番、分かりやすいのよ。だってイメージ沸き易いでしょ?」
啓太といずみは顔を見合す。
「人の体は傷口を修復しようとしてあらゆる手段を講じる。自然もそう。すべての事柄はバランスを保とうとする行為で
あり現象。これを理解できれば地上に起きる多くの事は理解できる」
「そんな難しい事はいいですよ」
「あら? だから子供って嫌なのよ。人の話は聞かないし自分本位だし、もう……」
紗璃は小声でぶつぶつ文句を言った。
「ごめんなさい。紗璃さん。でもぶっ飛んだ事言い出すから」
「つまり物事には理由があるって事よ。いずみちゃんに降りかかるわざとらしいほど不自然な悪運の理由はね、死ぬ
はずだったいずみちゃんが生きてるって事なのよ」
いずみは、その言葉を聞いて唖然とする。
「死ぬはずだったんですか? 私……」
「あっいや……死なないにしても生死に関わることが起きたはずだったわ。死に関わる事はその人の人生において重
大な事ですもの」
「なにか、その死神から逃れる手はあるんですか? このままじゃ相葉さんが」
「啓太君……」
自分の事の様に必死に食い下がる啓太にいずみの方が少し驚いていた。
「うーん、ない事もないわよ」
深刻になった二人に紗璃は驚くほど涼しい顔でそう言った。
「本当ですか!」
「でもなあ……」
「何ですか? 追加料金ですか? お金だったら貯金を下ろして来たし」
「ああ、いや、そうじゃなくて。君、ちょっと頼りなさそうだからさあ」
「そんなことないです!」
「そう? ならやってみる? うまくいけば、いずみちゃんを救えるかも」
「お願いします! 紗璃さん。ぼく何でもやります!」
「じゃあ、今夜2時にもう一度ここに来てみ」
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