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3、時間です
次の日――
啓太は携帯電話のディスプレイで時間を見た。
7時8分……もう少し。
昨日、あの占い師の言われた事をする為、啓太はいつもより三十分ほど早く家から出てここにいた。
あの不思議なカードの動きと紗璃という占い師の言葉には何か説得力があったが、それでも今だ半信半疑という
奴 だ。啓太は迷いながらも時間を待った。
その時だ!
遠くに見覚えのある姿が見える。
あ、相葉さん!
長めの黒髪が目立つ少女だった。
クラスは違ったが体育の合同授業で見かけて以来、啓太の心の中を大きく占める様になっていった。告白の方法
が思いつかなくて結局、頼ったのは昨日の占い館。そして今、啓太はここにいる。
何してるんだ? おれ。
深呼吸して気持ちを落ち着かせる。まるでスターティンググリッドに並んだレーサーの気分だ。
競泳のナントカ大地選手も飛び込み台に立った時はこんな気分だったのだろうか?
そんな事を思いながら啓太は携帯電話のディスプレイを見た。
7時11分……
その表示を見て啓太の心臓は鼓動が激しくなる。
(いい? 遅すぎても駄目。早すぎても駄目)
紗璃という占い師の言葉を思い出した啓太はフライングしようとする足を辛うじて踏んばった。
目の前を相葉いずみが通り過ぎていく。
綺麗な黒髪が風に煽られふわりと上がるのに啓太は少し見とれた。
あっ! そんな場合じゃない!
ジャスト7時12分! GOだ! GO!
相葉いずみは、信号のない横断歩道の前に差し掛かっていた。
啓太は相葉いずみの方に向うと思い切って声をかけた。
「あの、相葉さん!」
緊張していたせいか思いのほかに大声になってしまう。
「え?」
その声に少し驚いたように足を止めたいずみは、啓太に振り向いた。
「あ、あの……」
直後、振り向いたいずみの背後を信号無視したトラックが猛スピードで通り過ぎていった。
ディーゼルの排気ガスと埃が風に巻き上げられいずみの黒い髪を煽っていた。
「えっ……」
声をかけるタイミングが遅ければいずみは確実にトラックに跳ねられていた筈だった。啓太は、いずみの姿に見と
れたまま呆然としていた。
汚れた風が収まるころ、通り過ぎるトラックを唖然として見つめるていたいずみは啓太の方を見た。
「あ、ありがとう」
いずみは呆然としtながら啓太に礼を言った。
「ど、どういたしまして……」
まぬけな返事を返す啓太は、今まで振り向きもしなかったいずみが自分を見ている事に信じられない思いでいた。
今の啓太はそれだけで、しあわせだった。
(ありがとう。ブルース・リー)
何故か啓太はそう思った。
その異変は、啓太たちから少し離れた場所で起きていた。
電柱の傍では黒い靄の様なモノが何処からか湧き立っている。
風にも流れないその黒い靄は人の形にも見えた。
頭のような部分が、いずみと啓太をじっと見つめていた。
じっと……
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