2、占いますよ


 紗璃はテーブルに置かれたカードを一枚をひっくり返した。
「ああ、まだ気持ちを伝えられずにいるね」
「ええ、まあ……」
 さらに2枚をめくる。
「うーん……その相手ってちょっと大人しめな女の子かな? 相性はよさそうだよね」
「そ、そうですか?」
 紗璃の言葉に啓太は機嫌をよくする。
 次に三枚がめくられたとき、その思いは消し飛んだ。カードを見た紗璃の表情が眉をしかめているからだ。
「あのぉ……何か、よくないことですか?」
「いや、まあ、なんってゆーか」
 言葉を濁す返答に啓太に不安感が湧き上がる。
 さらに四枚目がめくられた。
「うわっやべっ」
 その言葉に啓太は焦る。
「えっ! (客の前でそんな言い方するか? 普通)」
 紗璃はカードを置くとため息をついた。
「け、結果どうでした?」
「まあ、女のコはこの娘だけじゃないから……」
「えーっ !( 回りくどい様で、すっごくストレートな言い方してる!)」
 がっくりとうなだれる啓太。
「いいじゃん。次のコ見つければ。ほら、君ってよく見るとイケメン入ってるし。カトゥー○のナントカくんに似てるって言
われたことない?」
「言われませんよ。それに誰ですか? そのナントカくんって」
「いや、その、あれよ……ごめん! わたし、実はハリウッド系が好きなの。ジャ○ーズ系って詳しくないし。ちなみに
ジョニー・○ップ様のファンです」
「いや、あんたの好み聞いてないし」
「と、とにかく、人生にはいろんな分岐点があるものなのよ。恋も同じ。塩味もあれば味噌味もあるわ。選べる味は、
まだまだあるし」
「カップ麺、好きなんですね……」
「うっ!」 紗璃は一瞬言葉に詰まる。
「どうもありがとうございました。ちょっとムカついたけど占い師さんなりに励ましてくれてるみたいだし、少し気持ちが
楽になりました。でも、もういいです。もうすぐ夏休みだけどめちゃ暗く過ごしますから」
「なんか、罪悪感を煽る言い方よね」
 啓太は代金をテーブルに置くとテントから出て行こうとした。
 その時だ。
「待って!」
 テントの外にも洩れそうな大声で啓太は呼び止められた。
「君、どうしてもこのコと仲良くしたいの?」
「え?」
「どーなのよ?」
 紗璃の問いかけに啓太は大きく頷いた。
「うーんとねぇ……付き合えない方法が無い訳じゃないんだよね」
「本当に?」
「でも、けっこー覚悟いるんだよね。この方法は」
「がんばります!」
 紗璃は立ち上がると啓太の傍に寄って肩を叩いた。
「よっしゃ! 少年。気に入った。純愛最高! 思春期最高! ビバっ! ビバリーヒルズ高校白書!」
「なんか……変ったノリですね」
 紗璃はその指摘に少し顔を赤らめ咳払いした。
「と、とにかく無理めな、あなたの恋を成就させる方法を教えてあげる」
「あの、無理めって言わないでくださいよ」
「ああ、ごめん」
 紗璃はカードをシャッフルし始めた。先程とはまるで違う見事なカード捌きだ。まるでマジシャンの様だった。その技
を見せられた時、啓太も否が応でも期待が高まる。
「あっ、そうだった」
 思い出すようにそう口走ると紗璃はカードさばきを途中で止めて啓太の目の前に手を差し出した。
「別料金になります」
「え?」
「いや、だから別料金」
「はあ……」
 啓太はお金を紗璃の手に置いた。
「ふふふ、何かを得るには必ず代価が必要になるのよ。それが世間の仕組み。覚えておくといいわ、少年」
 そう言うと紗璃はカードのシャッフルを再開した。
「さあ、いくわよ」
 最初は見事なテクニックだと思っていた啓太だったがカードは次第に不思議な動きをしていく。
 まるで生きているかの様なカードたちの動きに啓太は不思議な感覚に陥っていた。
「運命には様々な分岐点がある。その組み合わせは無数。今、ベストな組み合わせを算出してるとこ」
 しばらくしてからシャッフルを止めた紗璃は啓太にカードを差し出した。
「そして、思い描く人生を選ぶのはあなたの意思。彼女の事を思いながらカードを一枚取ってみて」
 緊張して指をカードに伸ばす啓太。
「"考えるな。感じろ" 」
「え?」
「ブルース・リーよ。知ってる?」
 そう言って紗璃はウインクしてみせた。紗璃の妙な言葉に少しリラックスした啓太は言われた通り一枚を引いた。
「裏は見ないでね。はい、こっちに渡して」
 紗璃はカードを受け取るとじっとまぶたも閉じずにじっと見つめた。その後、何枚かをカードの束から引くとテーブル
の上に置くと順にめくって行った。
「分かったわ」
 紗璃はそう言うと大きく息をつく。
「明日の朝、7時12分、必ず彼女に告白すること」
「か、かなり具体的な時間指定ですね」
「この告白はね、タイミングが大事なのよ。あなたがその娘と会うタイミングの中で最高のポイントを選んだ。その以外
の時間では絶対駄目だから! でないと不幸な結果になるわよ」
「それってフラられるってこと?」
「それどころか、もっと怖いことに……」
 紗璃は隠し持っていた懐中電灯で下から顔を照らした。
「いつもそんな事してるんですか?」
「い、いやちょっと演出を……とにかく!」
 紗璃は、がらりと変って真剣な表情で啓太を見つめた。
「これは大事な忠告よ」
 その表情にごくりと唾を飲み込む啓太だった。
「わ、わかりました」
「くどいようだけど言われた時間は絶対守ってね。遅すぎても駄目。早すぎでも駄目。ピッタリ7時12分」
「はい」
「よし! 後はがんばれよ、少年!」
 紗璃は思い切り啓太の背中を叩いた。



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