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「栄光あるジオンの兵士諸君、作戦開始だ」
それを合図に次々と発進するジオンのモビルスーツ群。
ザクが輸送船団を包囲していく。
「護衛もない輸送船団などちょろいぜ」
不恰好な輸送艦に並行するように位置したMS-08リック・ドムのパイロットが口走る。
「油断するな。作戦の本番はこれからだ」
隊長機が気の緩む部下を叱咤した。
その後、先頭の艦にMS-08リック・ドムの手をタッチさせると通信を入れた。
「輸送船団に告ぐ。我々は貴艦らを沈める用意がある。大人しく停船せよ。繰り返す。停船せよ」
ブリッジの乗組員たちは顔を見合わせる。
「な、なんでこんな所にモビルスーツ隊が?」
「話が違うぜ」
「うろたえるな!」
艦長が一喝した。一瞬で押し黙るブリッジの乗員たち。
艦長は帽子をとると頭を掻いた。
「いまだにこんな手駒があるとはジオンの生き残りめ。よくやる」
船団を追い越した二機のMS-06ザクUが行く手を遮る。120mmマシンガンを先頭の輸送船に向ける。輸送船が逆
噴射をしスピードを緩めた。
モビルスーツ隊が包囲網を縮め始めた。
その様子を偽装コルベット艦の後方でファントムはずっと見つめていた。
「気にいらねえな……」
何か嫌なフィーリングを感じとっていたファントムはゲルググ改のコクピットの中でそう呟いた。
航行を中止した船団に対しリック・ドムのパイロットは次の要求を出した。
「この船団のどれかに"ビッグボーイ"(核兵器)が積まれているはずだ。該当する船は速やかに申し出てもらいたい。
それがお互いの為でもある」
それを聞いた艦長は深呼吸を一息すると帽子を被りなおしマイクを取った。スイッチを艦内放送に切り替える。
「艦長だ。現在、本船団はコード・レッドに陥った。だが作戦は実行中である。諸君らの行動に期待する」
スイッチをオフにした艦長は船外のジオンのモビルスーツを睨みつけた。
「ジオンの亡霊どもめ」
オペレーターに外部通信に切り替えさせると再び通話ボタンを押した。
「こちら船団指揮官のレインウッド少佐だ。そちらの言う荷物は目録にない。おそらく何かの手違いではないかと思う
が」
『とぼけるのは得策ではない。指示に従え、連邦軍士官』
「こちらはそちらの言う荷物が何なのか分からない。詳しい説明を頼む」
それらしい言い訳で時間を稼ぎながらレインウッドは"合図"を忍耐強く待った。
船団の指揮官はチャンスのタイミングを待っていた。
しかし予想外の敵戦力の登場に予定していた次の手を出せずにいた。フィールドには"風"がなく船も作戦も進まな
い。彼は少し考えた後、"風"を呼ぶ事にした。
一隻の輸送船からライトが規則的に点滅した。包囲していた一機のMS-06ザクUがそれに気付く。
「こいつぅ! 何をした!」
120mmマシンガンを向けると点滅ライトに向って発砲する! 小規模な爆発が起きた。
「誰だ! 発砲したのは!」
側面から接近していたムサイ級の巡洋艦"トルネード"の艦橋では部下の独断行動にスワイン少佐が腹を立ててい
た。
『大尉! 部下を抑えろ!』
ミノフスキー粒子でノイズ混じりの無線から怒鳴り声が聞こえる。
「ちっ」
MS-08リックドムに搭乗していた部隊指揮官のエクスポゼ大尉は苛立ちながら発砲したザクUのパイロットを呼び
出した。
「ナイト3! 勝手な真似はよせ! この馬鹿が」
『し、しかし…大尉。こいつら何かの合図を出してました』
「合図?」
その時、目の前にメガ粒子砲の光の矢が通り過ぎる。
「なんだと?」
エクスポゼはカメラを望遠に切り替え、砲撃元の方向を映し出した。
「サラミスか!」
望遠ぎりぎりの位置で連邦軍の巡洋艦の船体シルエットが見えた。
サラミス級は砲撃を続けていた。メガ粒子砲のビームが宙域の闇を照らした。
『た、大尉』
通信に部下の一人の心細い声が入ってくる。
「距離があり過ぎる。ミノフスキー粒子の影響でレーダー照射もできないはずだ。当たりはせんよ。それに近くには輸
送船もいる。こいつは威嚇だ」
接近していたムサイ艦隊もサラミスに気付き速度を上げた。
「戦闘配備! メガ粒子砲の充填開始!」
スワイン少佐は戦闘指揮席に座った。
「偶然通りがかったか、それとも元々船団の護衛か……どちらにしろ邪魔はさせんよ」
コルベットも状況に気付いていた。
ルントヘットは敵に向うムサイ艦隊に通信を入れる。
「スワイン、核の奪取が優先だ。サラミスはこちらで片付ける。モビルスーツ隊にも包囲網を解かせるな」
しかし散布し過ぎたミノフスキー粒子が通信を妨害する。
「ちぃ!」
舌打ちした後、ルントヘットは通信を切り替えた。
「ダークスター、エンジェル。聞こえるか」
『はい大佐』
『聞こえるぜ』
「先にサラミスを始末しろ。ムサイとモビルスーツ隊を動かさせるな」
『了解』
『了解』
カモフラージュの黒い"凧"の後ろからアフターバーナーの光が見えた。そこから飛び出したのは黒いモビルスーツ
だった。黒いモビルスーツはどんどん加速し、ムサイ艦隊を追った。
コルベット艦では船体の先端が開かれ始めた。突き出た特記部がその正体を現す。灰色のモビルアーマーがゆっ
くりと姿を現していった。
「分離完了。"エンジェル"行きます」
『グットラック、"エンジェル"』
灰色のモビルアーマーはアフターバーナーを点火し急発進した。
「ファントム…あんたは僕が守ってやる」
加速したモビルアーマーは瞬く間に宇宙の闇に消えていった。
砲撃しながら前進するサラミス級は急接近する機体に気付いた。
「モビルスーツ隊からじゃないな。どこから湧いて出た」
艦長は腕組みしながらCG映像を睨む。
「推定速度は通常のモビルスーツの倍です」
艦長の眉間にシワが寄る。
「ただのモビルスーツではないな。ということは"奴か"」
その言葉に周りの部下たちに一瞬、緊張感が走る。
ムサイ艦隊が輸送船団を追い越した時、ようやく黒い"ゲルググ"は追いついた。戦闘のスワイン艦に接近して通信
を入れる。
「少佐、サラミスは俺たちが片付ける。あんたたちは包囲を解かずに獲物を押さえとけとの命令だ」
生意気なダークスターの口調にスワインは気分を少し害した。
「命令? 誰のだ」
『ルントヘッド大佐に決まってるだろうが』
さらに自分を上官と思っていないような態度にスワインはさらに腹を立てる。
「モビルスーツ一機に何ができる」
『俺は"ファントム"だぜ?』
黒いゲルググはムサイ艦隊を追い越しサラミス級に向った。
「出た! "ファントム"だ!」
輸送船のブリッジ内が興奮したムードに包まれる。
「よーし、作戦開始だ! ドジるなよ!」
ジオンのモビルスーツ隊は遠ざかる黒いゲルググの姿を目で追っていた。
その時、一人のパイロットが異変に気付く。
「何?」
輸送船の外装が外れ始めている。まるで分解をしているようだ。
パイロットは一瞬、それが輸送船のトラブルなのだと思った。しかしそれは大きな間違いだった。とても大きな……。
左のモニターに映りこむ輸送船も同じ"現象"を起こしている。
「違う……こいつは事故なんかじゃない……大尉! 様子が変です!」
次の瞬間、パイロットの乗るリック・ドムの機体は高熱量の粒子ビームに貫かれた!
誘爆を起こした融合炉が巨大な火の玉になって宇宙を照らした。
分離していく外装の中から白いモビルスーツが姿を現した。
連邦軍モビルスーツRX−78Fガンダムだ!
リック・ドムの爆発でジオンの部隊は、ようやく自分達の置かれた本当の状況に気がついた。輸送船の外装が無重
力空間に散らばっていくとその下から連邦軍の巡洋艦が姿を現してく。それも一隻ではない。輸送船団全てがサラミ ス級巡洋艦に姿を変えていった。
これは罠なのだ!
加速し始めのモビルスーツは動きが鈍い。ミナ・ハンサカーは冷静に照準を合わせていった。トリガーが引かれ、ビ
ームライフルから高熱量の粒子ビームが連続して発射されていく。次々と宇宙空間に爆発が起こっていった。
ミナの表情が歪む。
「嫌な感じ……とても嫌な感じだ」
3つ目の爆発が起きた後、ミナはビームライフルを下ろした。
しかしそれと交代するようにサラミス艦隊から一斉射撃が開始されていった。
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