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Dファクトリー

漆黒のファントム

3、突発戦
2稿目

「おっと」
 整備を終えたナッシュ・スガワがいきなり現れた将校を避けた。
「ごめんなさい!」
 整備兵が顔を上げる見覚えのある後姿がデッキに続く通路に向かって飛んでいるのが見える。
「出入り口付近では慣性での浮遊は禁止ですよ。"艦長"」
 ライス中佐は、悪戯っぽく微笑むと軽く右手を上げる。
「"士官は兵士の手本であれ"」
 ナッシュは、そう呟くと肩をすくめながら艦長を見送った。

 ブリッジにたどり着くと非番の部下たちがライスに気づいた。
「艦長入室!」
 入口付近にいた部下の一人が言う。地上なら姿勢をただすところだが人口重力も発生させていない状態のブリッジでは身体を浮かばせながら言うしかない。
 敬礼で迎える部下たちに同じく敬礼で返したライスは管制オペレーターの席に向かった。
「中佐? どうしました?」
「ガンダム隊のテストフライトをするんでしょ? ちょっと興味があってね」
 そう言ってほほ笑むライスは、管制モニターのシフトに近づいた。
「それならいいタイミングです。これから、発進です」
「モニターできる?」
 部下がにやりと笑う。
「索敵用のボールがガンダム隊をサーチしてます。その映像にリンクしましょう」
「悪いわね」
「いえ」
 オペレーターが手慣れた操作で装置を動かすとモニターにガンダムの映像が出た。同時に隣のモニターにはレーダー上の位置を3Dで示す映像が現れる。
「以前のRX78とは違うって?」
「RX78-3としてます。コードネームはエプシオン。基本性能はRX-78とほぼ同じらしいですがコクピット内のスクリーンを全面的に改修。テスト用の新型全方位スクリーンに変更してます」
「全方位?」
「理論上では死角がほとんどない事になります」
「すごいわね」
「あと、対ミノフスキー仕様のレーダーが精度を上げているのとバーニヤのパワーが上がってるって話です。パーツの一部はRGM-79を流用してますので機体強度は若干落ちているかもしれませんけど」
「その分、機動性と操作性を上げて補ってるわけね」
「そういうことです」
「さて、実際、どの程度に性能かしらね」
 ライスはモニターを楽しげに見つめた。


 カタパルトからでない発進は衝撃がないからつまらない。
 コクピットの中でミナはそう思っていた。
 コロニーの外壁に出た3機のモビルスーツは定位置についた。
 コクピットの中ではコンピュータとCGを駆使した新型の多包囲型のキャノピースクリーンの視界は足元までが映りこんでいた。
 周囲の全てが映り込むと、まるでモビルスーツの頭に立っているような気分になる。ミナは、この新型コクピットが大いに気に入っていた。
 コロニーの外壁に立つ3機のガンダム。
 中央にいた一機が左右に頭を振って合図する。
「さて、ショータイムだぞ、おまえたち。これよりターゲット・ブラボーに向かう。エプシオン2、3。俺に付いて来い!」
 そう言って真中のガンダムがバーニヤに点火してコロニーの外壁から離れていった。
『エプシオン2、ハーネットいくぜ!』
 ミナ機の横にいたガンダムもーニヤに点火し、コロニーの鋼壁から飛び立っていく。前方の宇宙空間にはすでに発進したデイモン大尉のガンダムが先行している。
「いよいよガンダムか……」
 ミナは、そう呟くと大きく深呼吸をした後、スロットルレバーを引いた。
「エプシオン3、ミナ・ハンサカー行きます!」
 バーニヤが噴射する。ミナの白いガンダムが暗い宇宙空間に飛び出していった。
「うっ!」
 予想外に強い加速感に一瞬と惑う。さすがに量産型のGMとは違う。歩かせて分かったがコンピュータの違いか、歩行もスムーズに感じたガンダムは、バーニヤの出力もワンランク高い。
 これに比べると主力兵器であるはずのRGM−79"ジム"も散歩用のポニーの様だ。対してガンダムのパワーは、まるで野生のムスタング。ピーキーな出力ではあるが、それをコントロールできた時、このモビルスーツは予想以上の能力を発揮すると思えた。
「やはり、79(ジム)とは違うね」
 ミナは、一発でこの機体が気に入った。

 コロニーから3つの白い光が飛び出していく。バーニヤの噴射ガスは真っ暗な宇宙空間に白い線を残していった。
 やがてコロニーの領空を抜けるとすでに用意してあったターゲットが見えた。
 廃艦となったムサイ級巡洋艦だ。かつてのジオン公国軍の主力戦闘艦である。
「ムサイ級の残骸じゃないっすか。いったい、どこから引っ張ってきたんです?」
「目標接近してる。無駄口はいいから俺に続け」
「了解ぃ」
 ハーネットが不服そうに言った。
 ムサイの直前を3つの白い光が綺麗に散開していく。
「まずはひとつめ」
 ムサイ級の残骸がスクリーンに映った。コンピュータは障害物として感知しそれを指し示す。ミナの焦点がそれを見定めようとすると機械はそれを感知しズームアップした。
「動かない敵なんて」
 そう思いながらミナはマシンガンの発射の準備をしようとした。そのときハーネットの通信が入り込む。
「エプシオン1!、俺からやります!」
 左からハーネット機のガンダムが視界に入ってくる。
『許可する』
 ミナ機の進路を割り込んだかたちになっていたハーネット機だがデイモン大尉は、あっさりと許可を出した。
「もう!」
 コクピットの中でミナは口を曲げた。
 最初は自分がしかけたかったのに!
 そんなミナの気持ちを知ってか知らずか先行していく一機のガンダム。
「はっ! どでかい標的だぜ」
 ハーネットはトリガーを引いた。
 120oの炸裂弾がムサイの残骸に放たれた。弾丸は"元"艦橋を貫く。ピンク色の爆発が起き、ムサイは大きく反対側に傾いた。
「ひゃっほーっ! この反動! 実弾もいいねぇ!」
 ハーネットは叫んだ。
『次、エプシオン2、行け!』
「了解!」
 ミナのガンダムはトリガーを握った。ミナの網膜が目標を選別していく。コンピュータはそれを読み取りスクリーンに照準をつけていく。瞬時に標的部分を選び出す。
 まずは戦闘力を無くすべき……
 ミナのガンダムが速度を上げる。
 だったら、あそこだ!
 マシンガンの弾丸は主砲跡を直撃した。

 コロニードッグ内のサラミス級巡洋艦エイプリルでは白いモビルスーツたちの様子をモニター越しで見つめていた。
「わおっ、すごい。いい腕ね、二人とも」
 ライス艦長はドリンクパックのチューブを咥えながらそう言った。
「さすがガンダムのパイロットに選抜されただけはありますね」
 2機の動きに一緒にモニターを眺めていたオペレーターも感心した。
「そうね。それに面白いところがもうひとつ」
「何です?」
 ライスの言葉にオペレーターは、興味深げに耳を傾ける。
「指示は曖昧な目標狙撃だったのに一人は司令塔、一人は攻撃力の排除。個性がはっきりしてるわ。こういった部下を扱うのは面白そうね」
 



「各自、機体の挙動を身体で覚えとけ。そいつは無反動式だが機体の損傷加減で照準が狂う事がある。基準となる挙動を覚えていれば異状を察知し易い。覚えておけ。意外だと思うだろうが人間の感覚はICチップより優秀なんだぞ」
 最後に標的のスクラップ・ムサイに接近したデイモン大尉は120mmライフルをセミオートに切り替えるとムサイのエンジン部分、格納部分、前部と3箇所を撃ち抜いた。
「やるじゃねえの。あのオッサン」
 デイモン機に接近していたハーネットは見事な射撃に思わずそう呟いた。
 致命的な攻撃を高速でこなす動きは、さすがに1年戦争を生き抜いたパイロットだった。
 爆発が続くムサイの傍を旋回する三機のガンダム。
『破片に巻き込まれないように少し離れて飛べ』
 先頭をいくデイモン機をミナが見た。
「了解、大尉」
 その時、デイモン機の後方に何かが見えた気がした。
 何?
 その感覚に思わず120mmマシンガンを向けるミナ。
『なんだ? エプシオン3』
「2時の方向に何かが見えた気がしました」
『破片だろ?』
 ミナ機て機体を避けるハーネット。
「違うよ、ハーネット、向こうに何かいるの」
 ミナの言葉にデイモンはレーダーを見た。戦時のミノフスキー粒子が今だ滞留するこの宙域ではレーダーも弱いエリアがある。遠距離であればあるほどその影響力は高い。ガンダムのレーダーをもってしても広域のエリアはカバーできなかった。
「何も映ってないが……いや!」
 レーダーにいきなり光点が現れると同時にビームがガンダム小隊に向かって発射された!
 ミナの機体をわずかにかすった。
『敵だ! 全機散開! 散開!』
 状況判断したデイモン大尉は瞬時に指示を出した。
 白いモビルスーツたちがコンバットブレイクしていく。
『エプシオン3! 無事か!』
「は、はい! システムに異常なし! 大丈夫みたいです」
 早まる鼓動を必死に抑えようとするミナ。いつの間にかバーニヤのスロットルが全開になっているのに気がついた。
「敵は……敵はどこ?」
 備え付けられている探知システムに目を凝らすと一瞬、何かが映ってすぐ消えた。
「なんで?」
 攻撃の第二弾だ! ビームがガンダム小隊の全機に向かって放たれる。
「一機じゃないらしい。でもどこからだ?」
 直撃を避けるハーネット機はコンピューターが特定した発射元にライフルを向けたがコクピットのスクリーンには何も映っていなかった。



 戸惑うガンダム小隊の様子を見つめる者がいた。
 バトルフィールドに向けた望遠カメラの映像がモニターに映りこむ。小型艇の外部に取り付けられたカメラのレンズは高速で移動するガンダムの姿を確実に捉えていた。
「なかなかやるじゃねえか、ザビーネ」
 戦場の映像を見ながらパウルは、ほくそ笑む。
「お前に知らせたのは見物させる為じゃないぞ。パウル」
 隣にいたもう一人がパウルに言った。
「わかってるよ、バウト少尉。ザビーネを止めろってんだろ?」
「ザビーネは無断で出撃してる。バックアップなしの攻撃は無謀だ」
「だったら、俺たちも出れば済む事じゃないの?」
「パウル。これ以上、俺を困らせてくれるな。でなけりゃ大佐に報告するぞ」
「わかってるよ、少尉。今はその時、じゃない……だよな。だがな、さっきから脳波通信が届いていないみたいだ。ミノフスキー粒子の影響が大きいのかも」
「くそっ、ザビーネめ」
 パウルは嘘をついていた。ザビーネとの交信はできる。だが今は、この小競り合いを楽しみたいのだ。パウルはカメラをズームアップさせた。
 あの、RX-78、いい動きをしてやがる。
 パウル・クライストはミナ・ハンサカーの駆るガンダムの映像を見てそう思っていた。



 ミナはモニターの様々な部分に目をやる。
「一体、どこに?」
 焦りを感じながらも注意深く宇宙空間を見つめた。
 どこかにいるはずだ。
 その時、下方からビームが迫ってくるのに気がついた! とっさにガンダムの機体をひねる。直撃は避けれたもののシールドを弾き飛ばされてしまう。
「けど、居場所はわかった」
 ミナはガンダムがバーニヤで方向転換させるとビームライフルを構えた。
 モニターが熱源のあった部分を指し示す。そこへ直進をかけようとしたときだ。反対側から敵の放ったビームがガンダムに迫った!
「え?」
 攻撃の第二波も辛うじて交わしたガンダムは見えない敵を探す。
「一体、どこから?」
 暗闇の中に敵は確かにいる。ただ、どこにいるのか見えないだけだ。
 少し離れた位置ではハーネットがミナと同じく敵を探す。
「次に撃ったら必ず居場所を突き止めてやる。しかし……」
 一旦、止んだ攻撃だったがミナに集中しているのが気になった。
 何かが光るのが見えた。閃光がミナのガンダムめがけて走っていく。

 奴め、ハンサカーに喰いついてやがる。

 ハーネットは、閃光の発射元に向かって狙撃を試みた。だが手ごたえはない。
「ちい! 遠すぎるか」
 バーニヤを操作し機体の方向を敵に向ける。射程の差があるとしたら迂闊な接近は危険だ。だがハーネットの攻撃的性格はそれを許さなかった。
 闇の中で敵は2つのガンダムの動きを把握していた。
 勇ましい……だが、無謀と勇気は違うよ。
 ハーネット機が敵を捉えた時、ハーネットはモニターに映った物に戸惑った。
「モビルスーツじゃない」
 目の前の兵器はビーム砲を取り付けた小型の機体だった。ハーネットは、大戦中、ビットと呼ばれた誘導兵器を操作するモビルアーマーの存在を思い出した。確かサイコミュ―とかいうシステムを使ったジオン軍の秘密兵器だったが……。
 本体は別か!
 そのビットを狙撃をしようとした時だった。上方から何かが光った。
 やばい!
 ハーネットの操縦するガンダムの右腕をビームが吹き飛ばす。僅差で機体を動かしていなければコクピットを直撃していただろう。
「ハーネットさん!」
 狙撃から逃れようとハーネット機が加速していく。
『恐らく敵はサイコミュ―を搭載している。発射元が本体とは限らない。注意しろ』
「サイコミュ―?」
 ハーネットの言ったのは聞き覚えのある呼び名だった。一年戦争時に何隻もの宇宙戦艦を撃破したジオンの兵器だ。パイロットはニュータイプだという。
 この相手……ニュータイプという事なの?
 ミナの操縦桿を握る手がさらに握り締められる。
「それなら!」
 ミナはキャッチしたビットを狙撃した。宇宙空間に青白い爆発の炎が球状に渦巻く。
 それに驚くかの様に他のビットの動きが忙しなくなった。バーニヤの光の跡が宇宙空間に残る。
「次はそこ!」
 一番近いビットを狙撃するミナ。
 命中!
 宇宙空間には再び青白い球状の光が広がっていた。
 他のビットの動きがさらに忙しくなる。バーニヤの光はガンダムのモニターに残像を残す。残像の光の線の先にはビットがいる。そして照準をつけようとする一瞬、その動きは止まった。ミナはそこを逃さず、狙撃した。
 正確な射撃はビットを次々を撃破していった。

 宙域から少し離れた位置にいた偽装船では、戦場を見守っていた。
「ザビーネめ、動揺してやがる」
 パウルは吐き捨てる様にそう言った。
「一機には当てたぞ」
 隣にいたヘルマンは眉をしかめた。
「別のガンダムはバーニヤの残留を追い始めた。ビットは瞬発的に動くが移動範囲は短い。残像を追跡されたら狙い撃ちされるぜ」
「とはいえ、ビットの動きを追えるものなのか?」
「奴は追ってる」
 パウルがそう言っているそばから、ミナのガンダムは狙ってくるビットを次々と迎撃していった。
「ビットの動きに落ち着きがなくなってんな。ザビーネの奴、焦り始めたようだぜ」
 パウルが肩を竦めてみせたが厚いノーマルスーツ越しでヘルマンには気づかれなかった。
「バックアップが必要になりそうか?」
「まっ、他のガンダムたちがコンビネーションを仕掛けてきたらヤバいだろうな」
「大佐に連絡する。モビルスーツの支援を頼もう」
「俺たちの事がばれるぜ。この艇は、偶然通りかかった民間船なんだからな」
「ザビーネを見殺しにするのか」
「そうだな……」
 パウルは宇宙空間に交差する閃光を見つめながらそう言った。



 手持ちのビットの8割を撃墜されたザビーネは焦り始めていた。
 今はこの小さな戦場全体をも把握できずにいた。そうなると折角の遠隔兵器も有効に運用できなくなってくる。
 次にビットを撃ち落とされたときにザビーネは遠隔攻撃をあきらめた。幸い、ザビーネの駆るゲルググ・シャウッテンはビームライフルを装備している。ザビーネはこれを使うことにした。戦力比は下回るが彼女は自分の腕に自信があった。ニュータイプの資質を見出されるまでは、通常のモビルスーツ乗りだったからだ。相手が3機のガンダムだとしてもだ。
 センサーに敵機の機影をキャッチする。
 きた!
 ザビーネは覚悟を決めた。
『俺とハーネットが左右から挟む。ミナ! 突っ込め!』
 デイモン大尉が声を荒げて命令した。
「りょ、了解」
 ミナは少し焦りながら指示通り正面からガンダムを接近させる。攻撃に備えてシールドを前面に立ててのアタックだ。
 陽動だが隙あらばと左右からデイモン大尉とハーネットの駆るガンダムがゲルググ・シャウッテンに接近していた。
 こうも気を逸らされては精神集中を要するビットの操作は無理だ。ビームライフルを乱射しながら逃れようとしたが、3機のガンダムたちは包囲を崩さない。
 このパイロットたち、なかなかやる!
 ザビーネの受けるプレッシャーが次第に恐怖に変わっていこうとした時だった!
「なに?」
 ミナの目の前に幾つもの正体不明の物体が大量に現れた。
 危険と思ったミナがガンダムを回避させる。それはゲルググ・シャウッテンの追撃を妨げる事になった。
 ザビーネはそのタイミングを逃さなかった。
「油断したね!」
 シャウッテンの放ったビームがミナのガンダムに迫る。
「うっ!」
 機体を咄嗟にシールドに隠すが衝撃で機体が大きく振られた。次の瞬間、ミナの予想外な事が起きた!
「な、なに?」
 被弾した感触はなかった筈だが何かが接触した。
 モニターに幾つもの機械の部品が見える。やがて小型艇らしい船体の一部が見えた。
 ミナのガンダムは何かに衝突したのだ。



 一体、何と接触を?
 ミナはモニターを見た。そこには宇宙艇の船名が映っていた。
「デンプシー……民間船?」
 ガンダムに衝突したのは小型の宇宙艇だった。外観は民間のものだ。
「民間船が? なんで?」
 とはいえ輸送船の航路のひとつだ。いてもおかしくないが、それにしても衝突とは。
 ミナはスラスターを巧みに操作し、回転する機体の態勢をたて直した。

 敵は!

 機体を元に戻した後、ゲルググを探す。しかし、敵の姿は既に消えていた。目の前にあるのは損傷した小型艇だけだ。
 火花が上がっている。強化ガラスの窓から人影の動くのが見えた。
「大変だ……」
 民間船の様子を見てミナは慌てて通信を入れた。
「こちら連邦軍ミナ・ハンサカー准尉です。聞こえますか?」
 ミナは通信を繰り返したが民間船からは返事はない。ミナは民間船との交信を諦めてこの様子をモニターしているであろう仲間に通信を入れた。
「こちらエプシオン3、民間船が戦闘に巻き込まれ損傷した。救助を求む」
 そのころサラミス級巡洋艦エイプリルが戦闘のあった宙域に接近していた。
 艦橋ではライスとリケンベがミナからの連絡を受けて顔を見合わせていた。
「民間船?」
 リケンベが通信マイクを取る。
「リケンベ中佐だ。エプシオン3、民間船を誤射したのか?」 
『いえ、しかし、その、機体をぶつけてしまって……』
 心細そうなミナの声がする。
「レーダー、捉えたか?」
 エイプリルの艦長であるライスがオペレーターに聞く。
「まってください……捉えました。その小型貨物船はデンプシー号。登録番号F417758。管理局に登録済みのサイド間輸送業者です」
「なんてこった」
 リケンベは眉をしかめる。
「事故よ。保険も降りるでしょ」
「気楽に言うな。責任問題になる」
「そんな事より、人命救助を優先しましょう。オペレーター、通信回路をこちらに回せ」
 通信が回されると指揮椅子に座るライスは受話器を取るとボタンを押した。
「エプシオン1、聞こえるか」
『はい、中佐』
 デイモン大尉が通信に答える。
「大尉、状況は?」
『はい、"ファントム"と交戦中にエプシオン3の機体と輸送船が接触しました』
「ファントムはどうなった?」
『残念ながら見失いました』
 それを聞いたリケンベ中佐は首を横に振った。ライスはそのまま通話を続ける。
「では民間船の方はどうか? 無事か?」
『停止してます。こちらか見る限り致命的には見えませんが、航行は不能の様です』
「どうします? リケンベ中佐。ファントムの捜索をさせますか?」
 リケンベは少し考えた後、答えた。
「いや、深追いはよそう。それに敵の装備は予想外だ。対策が必要そうだしな」
「では、撤収ですね」
「ああ、そうしよう」
「あと、作戦に支障がなければ民間船の救助を行いたい」
「任せる」
「大尉、本艦は、これより民間船の救助作業に入る。モビルスーツ全機、帰還せよ」
『了解』
 デイモンはスラスターを操作して機体の方向を変えた。その後を、ハーネットのガンダムもそれに続く。だが、ミナのガンダムだけはその場に踏みとどまった。
 モニターに映る損傷した小型輸送船から視線を外せなかった。
「ライス中佐」
『どうした? エプシオン3』
「できれば輸送船の救助活動に協力したいのですが」
『何?』
「モビルスーツがあればいろいろと役に立ちます」
『エプシオン3、お前の機体も損傷しているのではないか?』
「大した損傷ではありません。生命維持装置も無事ですし」
 ライスはリケンベの顔を見ると了承の意味でリケンベは軽く頷いた。
「よろしい、エプシオン3。要望を許可する」
『ありがとうございます、中佐』
 ライスは受話器を置いた。
「やれやれ、責任を感じてるのかしら」
 そう言ってライスは肩を竦める。

 通信を終えたミナはガンダムを民間船に再び近づかせた。




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