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Dファクトリー

 

Trick or Witch

 実験の終了した研究所は大騒ぎだった。
 発生した反物質の周囲の一部から何かが飛び出してきたのだ。
 研究者たちはこの黒い塊をブラックホールではと思ったが、物体はすぐ消えた。
 計算上はブラックホールが発生してもすぐに消滅するという予測ではあったが……
 VTRが巻き戻される。
「君は何に見える」
「君こそ」
「私は疲れてるのかもしれん」
「ああ……僕もだよ」
 二人の科学者はお互い目をこすった。画面に映っていたのは見た事のある姿だった。それは彼らが幼いころだ。よく絵本で見た姿。
 ホウキに乗った魔女だった。


 「わぁ、ワタシおなかすいてたんだ!」
  彼女は目の前の料理を見てそう言った。
 ヴァーグは頬杖をつきながらその様子を眺めた。自分のテーブルにはコーヒーが置いてあるだけだ。
「ホントにいいの?」
 黒いワンピースの女の子は帽子を取ると遠慮がちに尋ねた。
「いいさ、俺が君を車で轢きそうになっちまったからその詫びだ。遠慮なく食べてくれ」
 女の子は嬉しそうにフォークとナイフを手に取るとフォークを料理に突き刺した。だが途中で口に入れるのを止める。
「あなたは食べないの? えーと何さん……」
「ヴァーグだ。君は?」
「ラファル」
「そうかラファル。俺は失恋したばかりでね。飯を食う気にもならない。だから遠慮するな」
「失恋? 誰かの愛を失ったの?」
「芝居じみた言い方だが……まあそういう事さ」
 ヴァーグはコーヒーを口に付けた。
「ふーん」
 ラファルは食事を始めた。
 本当にお腹がすいていたのか、勢いがすごい。
「あら、かわいいお友達ね」
 そうこうしていると見知った店員がやってきた。
「ああ、迷子みたいだから署に連れてく途中。お腹がすいたからっていうから連れてきたんだよ」
「やさしいのね」
「正直いうと、あまり仕事をする気分ってのもあるけどね」
「そうなの。コーヒーのお代りは?」
「頼むよ」
「ヴァーグ。私をどこかに連れてくの?」
「ああ、食事がすんだら署にいく。御両親と連絡もつきやすいだろうからね」
 ガシャン! 皿がひっくり返る音がした。
「ヴァーグも私を連れて行こうとしてたのね! いい人だと思ったのに!」
「お、おい、落ち着けって。一体どうしたってんだ」
「ひどい!」
 ラファルは椅子から立つと店から飛び出していった。
「え? おい! こら!」
「どうしたのかしら?」
「どうやら迷子じゃなくて家出らしい。なおさら放っておけないや。あ、これ、お勘定」
 ヴァーグは急いで代金を払うとラファルを追って店から出た。



Trick or Lantern