Dファクトリー

 

Trick or Lantern

 研究者たちがVTRを繰り返し見て検証している時だった。
 突然、装置が勝手に動き始めた。
 慌てる研究者たちを尻目に再び、大量の電力が流れていく。
 バカーン!
 強烈な光が放たれるとそこから何かが飛び出してきた。
 今度はVTRに映っていたホウキに乗った魔女ではない。オレンジの頭を持った怪人だ。
「我こそは常夜の国の支配者ジャック・ランタン伯爵! 下賤な人間ども! 我が花嫁をどこへ隠したか!」
 研究所の職員たちは高らかに叫ぶ怪人を茫然と見上げた。
「うぬ……言葉を解さぬ程、人間は知能の低い生物か。仕方がない。キ・ドゥーよ! 忠実なしもべよ! 我が元に来い!」
 引き続き研究所の職員たちは高らかに叫ぶ怪人を茫然と見上げた。
 空間に黒い穴が空きまた何かが飛び出してきた!
 黒い巨大な犬だ! 
「よっしゃしゃしゃ、地獄の猟犬にして我が友よ。さあ、我が花嫁を追え!」
 黒犬はランタン伯爵を乗せると研究所を分厚い壁を突き破って外へ飛び出した。その後を大量のお化けや怪物がついていく。
 研究所の職員たちは高らかに叫びながら外に飛び出した怪人を茫然と見送った。
「この現象……ホーキング博士なら何て言うだろう」
「きっとブラックホールが多次元宇宙が繋がっている証拠だと言うでしょうね」
「では、我々は博士の学説を実証したという事だな」
「そうかもしれません。でも……」
 研究員は口も籠らせた。
「飛び出してきたには魔女とハロウィンのカボチャ頭ですけどね」
「夢だよな」
「ええ、夢でしょうね」
 研究者たちは再生されるVTRを見つめた。
「しっかりビデオに映ってますけど……」



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