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Dファクトリー

2、君はどろぼう
二稿目


「でっ? ワケって何」
 泥棒を正座させて肩にホウキを担ぐキーラ。その姿は、まるで怖い先輩に説教されている後輩だった。
「それがですね……うっ、うっ」
 正座させれた泥棒はすすり泣きしだした。その場が、ますます怖い先輩と気弱な説教されてる後輩状態になっていく。
 それを見た人たちがヒソヒソと小声で何か言って通り過ぎていく。
 かわいそうに……と聞こえた時、キーラは自分の方が悪いみたいに思われているのに気がついた。
「ちょ、ちょっと泣かないでよ。男でしょ?」
「そう言われましても、なんか涙が止まらなくって……うう」
「わかった、わかったから。他に行こ! 他」
「では、私の家にでも」
「なんであんたの家なのよ!」
「いや、なんか落ち着くかなーって」
「あんたがでしょ!」
 怒鳴るキーラに泥棒は、またすすり泣きだした。
「わかった、わかったから。行きましょ! あんたの家。それでいい?」
 泥棒はにっこり笑うと立ち上がろうとした。
「あら?」
 そのままひっくりかえってしまった。
「ちょっと! どうしたのよ」
「いや、足がしびれまして、どうにも……アタタ」
 泥棒は体を横にしたままそう言った。
 通りの方から「酷い」とか「怖い」とかいう言葉が、かすかに聞こえてくる。
「わかった! わかったから」
 キーラは泥棒を背負うとその場から急いで立ち去った。



「本当にすみませんねえ」
 結局、キーラは泥棒を背負って泥棒の家まで来てしまった。
「足は治ってたのに……親切な方だ」
 ドスン!
 それを聞いたキーラは、とたんに背負っていて泥棒を落とす。
「痛てて……なんて乱暴な奴だ」
「ちょっと! 足が元に戻ったならなんで先に言わないのよ!」
「いや、なんか柔らかいし、いい匂いがするし……それに楽だし」
「てっめー落とすぞ! 崖から」
 怒りの形相に泥棒は焦った。
「お、落ち着いてください! とにかく中に入って、さっ!」
 慌てて泥棒はキーラを家の中に招き入れた。
 中の様子は少し雰囲気が変わっていた。なんというか、異国の様式で家具や壁飾りがそろえらていた。
「ふーん、あんた、この国の人じゃないんだ?」
 不機嫌そうな顔つきのままキーラは部屋を見渡してそう言った。
「はい。わかりますか」
「だって、なんか部屋の感じ違うし」
「はっ、私は遠い東洋の国からやってまいりました」
「へえ……」
 キーラは物珍しそうに部屋の中を見渡した。
 泥棒は東洋式のカップを持ってくるとお茶を注いだ。
「お茶が、グリーンなのね」
「はっ、こちらでは発酵させる様ですが私の国では炒って乾燥させたままに湯を注ぎます。湯の温度はこちらより低めにするのが美味しく飲めるコツでして……」
「で、その東洋から来た人がなんで泥棒やってんのよ」
 泥棒は、カップを置くと、またすすり泣きだした。
「だから、泣くなって!」
「はっ、すみません。つい治りかけた心の傷にずかずかと踏み込まれたみたいで……」
「何気に嫌味なやつね。ところで、あんたの名前は?」
「はあ」
「そろそろ書いてる人が泥棒って続けるの面倒くさがってるのよ」
「私はシローと言います」
「シローねえ……私はキーラ。魔法使いよ」
「私は……」
「泥棒でしょ? 知ってるわよ」
「いや、こうみえましても国では、こちらでいう貴族の様なポジションでした」
「貴族から泥棒?」
「違いますって! サムライっていう身分でしたーっ!」
「わ、わかったわよ。信じるわよ、サムライ。あのおかしな煙を使うのもサムライの嗜みってやつなの? あれ、目が痛くてたまんなかったわよ」
「ああ、あれは"ニンジャ"の技です。私、身分はサムライでも仕事はニンジャでしたから」
「ニンニャ?」
「いえ、そんなかわいく言わなくても結構です。ニンジャです、ニンジャ」
「ニンジャってどんな仕事よ?」
「はあ、敵の屋敷に忍び込んで密書を盗んだり、といろいろ……」
「泥棒じゃん」
「違いますって! 身分は、サムライって言ったでしょ! 私の家は代々戦いの時代を生き抜いた名誉ある家柄なのです! ごらんください!」
 そう言っていシローは天井を指差した。
「え? 何……って、おおっ!」
 天井一面に大きく家紋の入ったシートがつけられていた。大きさは部屋と一緒だ。
「これって……」
「ふふん、驚きましたか」
「なんて無駄な労力」
「キーラさん、思いやりって言葉知ってます?」
「知ってるわよ。わたしは思いやりが服着て歩いてる様なものだし」
「いや、ないでしょ。それ」
「それより、私のホウキを盗んだワケを聞かせなさいよ。ここまで来てやったのはそれを聞く為なんだから」
 シローが真顔になる。今までのへらへらとした態度とは一変した。これが"サムライ"ってやつなのかとキーラも少し感心した。
「それは我が"君"の為でございます」
 シローは握った拳をわなわなと震わせて語り始めた。



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