8、エンディング
二稿目
キーラは、揺れて壊れたベオウルフ1000の部品を集めた後、店に向かっていた。
シローと朱姫は街を離れ別の土地に移っていった。
求婚していたお金持ちの追跡からも恐らく逃れられるだろう。
心配なのは護衛の筈のシローがドジな事だったが、それも誠意と熱意で(?)で何とか乗り越える事だろうとキーラは思っていた。
それより今は他人の事より自分のことだ。
「はあ……」
キーラはこれで今日24回目のため息をついた。
シローを飛ばす為とはいえ自慢の長い髪をばっさりと切ってしまったキーラのテンションは低いままだ。
エクステをつければ少しは気分も変わるかもしれないが、お金はベオウルフ1000を買うのに使ってしまって、あまり残っていない。
まあ、部品が売れれば、エクステーションの資金の足しになるかもしれないと思ったキーラはバラバラになった部品を拾い集めたのだった。
が、それにしても袋に詰めたベオウルフの部品は重かった。
この苦労もエクステに変わると思えば、我慢できるというものだったが、とはいえ飛ばないホウキがこんなに重いとは……いや、重すぎる。
「重いのは、カスタムだからねえ」
カスタム空飛ぶホウキショップの店長シルヴァーはひげをさすりながらそう言った。
「しかも壊れてるし」
「部品を買ってよ」
「って言われても……うーん」
シルヴァーは困り顔で頭を掻いた。
キーラが粘っていると店の前に数人の若者たちが通りかかった。若者たちはキーラを見つけると何やら話し始めた。
「あのショートカットのコ、かわいくね?」
その話声にキーラの耳が大きくなる。
「おっ、かわいいーっ、ショートの似合うコっていいね」
なんだか顔がほころんでくるキーラを見てシルヴァーが眉をしかめた。
「き、キーラさん?」
結局、空飛ぶホウキ・ベオウルフ1000の部品は僅かな額で引き取ってもらったが、それはエクステの代金にはならず、代わりにスイーツの代金となって午後には消えていた。
スプーンですくったスイーツを口に入れたキーラは窓ガラスに映った自分の姿を見て顔がほころぶ。
「こうゆうのも悪くないかも」
キーラはそう呟いてショートヘアをかき上げた。
「湖の塔」おわり
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