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Dファクトリー

5、魔法のしたく
二稿目


「しかし、もう一度、キーラちゃんの髪をカットできてよかったわぁー」
 切りかけの髪をカットしてに来たキーラに喜ぶカットサロン・(レザボア・ドッグス)の店主ブラウンだったがキーラの方は浮かない顔だった。
「でも、本当にいいの?」
 キーラに顔を近づけ念押しするブラウン。
「う、うん……」
「さあ、すっきりしましょう! キーラさん」
 後ろでシローがはりきっている。キーラは鏡越しにジロリとシローを睨む。
 キーラの髪にハサミが入った。バッサリと切られるやわらかい青い髪が次々と床に落ちていく。
 10分もすると鏡に映るキーラの感じがずいぶん変わってきていた。鏡に映る自分の変わっていく姿を見て、ため息をつくキーラ。
 さらに数分過ぎるとヘアスタイルも形になってきてたものの、キーラの表情は冴えない。
「いやー、だいぶ取れましたねえ。けど、もうちょっと取れればなぁ……あいた!」
 床の髪の毛を拾い集めるるシローのお尻をキーラが蹴飛ばした。
「痛いですねー。なんですか、いきなり」
「うるさい」
 キーラは涙目でそう言うとじっと鏡で自分の姿を見つめた。


 *  *  *  *  *


「さっ、終わったわよ。我ながらいい感じなんだけど」
 ヘアカットが仕上がるとブラウンは、自信ありげにそう言う。
「どう?」
 鏡で仕上がりを見たキーラの顔は複雑だ。
「意外と……いいかも」
「でっしょーっ」
 手を叩いて喜ぶブラウン。キーラの機嫌も少し、よくなってきていた。
「に、似合うかなあ……」
「似合う、似合う。キーラちゃん、素敵よ」
「そう?」
「そうですよ、キーラさん。すごくいいですよ」
「なんか、シローに言われるとムカつくのよねえ」
「なんでですか!」
「さあ、次の作業」
「キーラさん? なんで無視するんですか? ねえ、ねえってばーっ」


 *  *  *  *  *


 次にカットしたキーラの髪が集めて束ねられた。
 切り落とした3/4の髪は一人分のカツラを作るには十分な量だ。ブラウンが丹念に編みこんでいる。
「まったくぅ、キーラちゃんたらエライわ」
 カットしてる間に事情を聞いたブラウンがそう言った。
「なりゆきだって。そんな大そうなこっちゃないわ」
「でも、そうマネできる事じゃないわよ。だって自慢のロングヘアーをばっさりだもの」
「ま、まあね。けど、少しヘコんでつんだけど」」
「そーだよねー、手入れもしっかりしてたもんのねー。かわいそーだわー」
 と、言うわりにはブラウンは、すごく楽しそうに編みこみをしている。それがちょっと引っかかるキーラだった。
「さあ、出来上がったわ!」
 ブラウンが青い髪のエクステを掲げた。
「ほう、見事なカツラですね」
「カツラじゃないわよ。エクステよ」
「かつらでしょ?」
「違うわよ、もーっ。シローちゃんてば、ここに座って」
 今度はシローを椅子に座らせるとキーラの青い髪をシローの髪に編みこみ始めた。
「へえー、私の髪みたいに見えますねえ。なるほど、これでエクステというのですか」
「そーよ」
「でも、私の黒い髪でキーラさんのが青い髪だからちょっと違和感ありますね」
「だったらさぁー、染めてみる?」
「あっ、いいですね。それお願いします」
 盛り上がる二人の横でキーラが腕を組んでじっと見ていた。
「楽しそうねぇ、お二人さん。人の髪の毛で遊んでそんなに面白い? しかもお金払うのも私なんだけどぉ」
 その声は妙に静かで低く、なんとなく背後には黒いオーラがゆらゆらと見えてる。
「あ、いや、その……キーラさん。なんか面白くなっちゃって」
「そ、そうなのよ。悪気なんてなしなし」
 無言のキーラがワゴンに置いてあったハサミを取った。
「お、落ちついてください! キーラさん!」
「きゃーっ! キーラちゃん、早まったことしないでーっ!」
 カットサロン・(レザボア・ドッグス)に男二人の叫び声が響いていた。



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